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『一石を投じる』 ―常識とされることをまずは疑ってみる―

2010年12月20日

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水に一つの石を投げ入れると、水面に波紋が広がります。
この諺は、新たな問題や意見を投げかけて、反響を呼び起こすことのたとえで使われます。
英語では「to cause ripples.」(=波紋を起こす)と表現するようです。
世の中には、常識として信じられているものがあります。
その中には、永久不変的なものもあります。
しかし、ある種の風習となって根付いてしまっているものもあれば、因習として残り、信じられ続けているものもあります。
また、時代とかけ離れてしまっているにも関わらず、迷信として残っているものもあります。
ちょっと待てよと立ち止まり、疑わしくなってきている常識に対しては、新たな石を投げ込んで波紋を起こすことも大切だと思うのです。
特に消費者心理が動きにくい環境にあるとするなら、心を揺さぶるような新しいアクションを起こす必要があると思うのです。
今回は、常識とされることを疑ってみることの大切さを考えてみたいと思います。

《一線を画す》

はっきりとものごとを区別し、けじめをつけることを、「一線を画す」といいます。
「画す」は線を引くことを言い、引いた線で境界をつけることにより区別をしていくことから、この諺が生まれました。
英語では「to draw the line」(=境界・限界をつける)と表現するようです。
デフレの世の中で、値引きが当然のように言われている中で、それとは一線を画し、自信を持って値上げに踏み切る企業があります。
東京ディズニーランド(TDL)と東京ディズニーシー(TDS)を運営するオリエンタルランドです。
来年の4月より、入園料を引き上げ、一日券のワンデーパスポートの大人料金を現行の5800円から6200円に値上げする他、各種チケットも4~16%程度値上げをするそうです。
開園してから過去二度値上げしたそうですが、二度ともその後の入園者数は増えたとの話です。
もちろん、むやみに根拠なく値上げするのではなく、一年間かけてゲストの満足度の向上を細心の注意を持って見極め、新施設を増やし、それにより感動を絶やさないという絶対的な自信を持った上で、大胆に値上げをするというのです。
新設アトラクションだけでなく、ディズニーシーの開業10周年イベントの実施によるプレミアム感も考慮しているそうです。
4月の値上げ前の1~3月までのかけ込み入園者数も増加する目算をしているなど、自信を持っての大胆値上げなのです。
デフレだから値上げは難しいという常識論に立つのではなく、熱狂的な固定ファンをつくってきた自信があるから、そのファンが一層喜ぶ仕組みを増やしたら、値上げしても、喜びも増えるのだから問題ないと考える常識もあると思うのです。
リサイクル品や中古品が安く買えるものと考える常識もあれば、骨董品やヴィンテージ物という、古い方が価値が上がるという考え方も一方ではあるのです。
つまりは、お客様の気持ちの上での満足感で価値が変わり、対価である価格の値ごろ感が変わってくると思うのです。
お客様の支持が得られるお店なら、更に喜びを増やすことで、値上げもできるのではないかとの発想だと思います。

《一世を風靡する》

ある魅力でその時代の人々の心をとらえて人気をさらい、大いに持てはやされることを表した諺です。
「風靡」の意味は、風が草木をなびかせることだそうです。
その時代の多くの人々の心を、一つの傾向になびき従わせることの意味から使われるようになりました。
現代は、東京ディズニーランドのように、一世を風靡するような他者と決定的な違いを認識できるものは極めて稀になってきているのではないかと思います。
ビジネスの成功の要は、競争力にあるといわれます。
競争力とは競合他社といかに差別化できるかということです。
1980年に、米国人のマーケティングの権威、セオドア・レビットが、「マーケティングの成功条件は、差別化にある」という論文を発表しましたが、それから三十年間、企業はこの教えを頑なに守り続けてきた様です。
その結果、微妙な違いから簡単に差別化という言葉を乱用し、些細なことを大げさな違いとして騒ぎ続けたようにも見えます。
しかし、その差が細かくなりすぎると、差別化は無意味になってしまいます。
製品の違いは小さくなり、類似性ばかり目につき、種類こそたくさんあるが、それらの製品には、違いがほとんど見えなくなってしまいます。
多すぎる品はあっても、ユニークさで傑出したものを探すのには苦労をするといったことではないでしょうか。
デフレで値引き合戦が起こり易くなっていると言われますが、違いが認識できない物で世の中があふれ、差が感じられないので、価格競争に巻き込まれている側面もあるのではないかと思います。
ビューティサロン間の競争でも、このような状況に陥っているような気がしてなりません。

《競争の正体》

顧客重視というと、市場調査をして自社の競争力を測ろうとするなどの分析手法をとります。
こういった前向きな努力が、結果的にはかえって均質化や類似化を促すことになってしまうと指摘する人がいます。
ハーバード・ビジネススクールのヤンミ・ムン教授です。
消費者に尋ねるということは、「競合他社が何を提供しているか」を聞くのと等しくなり、それが市場調査の問題点になっていると、彼は言うのです。
消費者に聞くと、この点は満足だが、違う点をもっとこの様に欲しいと答えるのが常で、これをすることで自社製品(サービス)と他社製品(サービス)の強みと弱みを比較していくと、双方の相違点が見えてきます。
しかし、相違点が見えると、強みを伸ばすのではなく、一番弱い部分をてこ入れして、直していこうとしてしまいます。
互いの違いを際立たせるのではなくて、解消しようとする方向に走りがちになります。
皆驚くほど真剣に「もっと良くしたい」と考えて、改善改良をするのですが、それが結果的には特徴を消してしまう方向に動いてしまうのです。
「もっと良くしたい」と思うと2つの方法を取るそうです。
ひとつは、「付加型」という足し算の方法で、プラス機能を付けて進化させ、競争力を増やそうという考えです。
例えば、洗剤のシミを落とす力を高めたり、洗剤に柔軟剤効果を持たせたりするのです。
しかし、これをいかに繰り返しても、新しい付加された機能は他社が追随し、やがては標準機能となり、いくら価値提案をしても、消費者は無関心になりがちになるのだそうです。
どの洗剤でもシミが取れるなら、消費者は選り好みする必要がなくなるからです。
もうひとつは、選択肢が増えていく「増殖型」です。
人の好みは千差万別なので、特定の人の要望に応えるものをひねり出します。
「ダイエットコーク」、「白い(青い)(黄色い)ベンザ」などのような細分化増殖です。
この場合、どんどんと小さなターゲット集団向けに製品やサービスを細かく分けすぎて、違いに対して消費者が大きな意味を見いだせなくなってしまいます。
市場をどんどん小さな分類に切り刻み、違いに大きな意味を持たなくなってしまいます。
「選択肢の激増」と「意味ある違いの縮小」という、経営方向としては、最悪の状態に入り込
んでしまう可能性があります。

《独自性》

成熟してきた社会では、企業も店舗も一群となって競い合い、一定の方向に向かい、同質性を帯びてしまいがちになります。
そうした無意味な競争を避けなければ、価格競争に巻きこまれ、人物金などのパワーの勝負になってしまいかねません。
しかし新しい価値創造をして、競争のない独自のブランドを作り上げて、成功している人々が多く存在します。
ブランドの語源は、「焼き印を押すこと」(=a brand)。
自分の牛だと判るように、小牛に焼きゴテで「しるし」を付けたことが起源の言葉です。
焼き印を押されたお客様はそのお店やメーカーの虜となり、それ以外に目が向かなくなる、これがブランド化です。

《ホスタイル》

エナジードリンクで大ヒットしている「レッドブル」は、発売前にヨーロッパで大規模な市場調査をしたそうです。
消費者の反応を知るために、試飲の市場調査をしたところ、慣れない味に対しての消費者の反応は極めて悪かったそうです。
「色が薄く、飲む気になれない。」「口はネバネバするし、嫌な味だ。」など惨々な試飲評価で、調査会社の結論は、「これほど失敗が確実な製品は見たことがない。」との結果だったそうです。
しかし、レットブル社はそのまま発売に踏み切りました。
ナイトクラブやバーで人気を得はじめると、消費者は「液体コカイン」「缶入り覚醒剤」「液体バイアグラ」などと呼び始め、原料は牛の睾丸などとの噂も飛び交ったそうです。
健康への影響を心配する消費者がボイコット運動を始めても、レッドブル社は噂をもみ消そうとも、不安を解消しようともしなかったそうです。
普通に考えれば、消費者に喧嘩を売っているようなもので、「心配なら、飲まなくてOK」という態度を貫き通したそうです。
消費者の好感度に背を向けても、絶対に消費者に喜ばれるはずであると、世論を敵に廻してでも貫き通す手法を「ホスタイル・ブランド」と呼ぶそうです。
Hostileとは「対立」「敵対」といった意味で、大型車社会だった米国にミニクーパーが販売開始した際も、レッドブルに近いホスタイルのマーケティング手法を取ったそうです。
自社製品については口当たりのいいことを言うのが普通で、市場調査で消費者が製品やサービスの欠点に不安を感じているのが明らかであれば、提供者側はそれを払拭するか、他の長所に目を向けさせるようにするのが一般的マーケティング手法です。
それを、説得という手法を使わず、長所も短所もさらけ出し、もし消費者が気にいらなければそれまでだ、と言ってのけてしまうのが「ホスタイル・ブランド」だそうです。

《リバース》

また、今まで常識とされるものの、まったく逆を行くものを世に送り出す手法を「リバース・ブランド」と呼ぶそうです。
世の中の流れのまったく逆を選択する手法です。
過剰サービスにあふれた業界に、逆にそっけなさが魅力を持つことに注目し、そのそぎ落として残ったものに強烈な魅力付けをすることにより、格安運賃で一世を風靡した航空会社ジェットブルーがその代表格だそうです。
当時の航空業界は、機内食や座席のクラスのグレードアップなど、サービス強化合戦が真っ盛りだったそうです。
そこへ、単なる格安ではなく、余分なものはそぎ落としながら、全席レザーシートで衛星放送が各自見られる、格安会社に期待したことのない贅沢を付加させたサービスでジェットブルー社は大成功したとの話です。
今までにない期待していないものを提供するのが「リバース・ブランド」の考え方だそうです。
初めは戸惑っても、他との違いがはっきりするという手法です。

《ブレークアウェー》

既存の分類を書き換える「ブレークアウェー・ブランド」という手法もあります。
ソニーは「AIBO(アイボ)」をロボットとしてではなくペットとして売り出しました。
20万円という価格で10年前に売り出されたアイボは、当時はソフトに不具合が起きやすく、持ち主の命令に応えないこともあったそうです。
しかし、大金を払ったにもかかわらず、持ち主達は非常に寛大で、アイボが命令に従わなくても笑っていたそうです。
それは、アイボをロボットとしてではなく、ペットとして見ていたからで、持ち主ではなく飼い主になっていたからです。
ロボットは命令に従うものですが、ペットは気まぐれなお馬鹿さんでOKなので、命令に従わなくても怒らなかったのです。
ロボットではなく、機械でできたペットという新しい枠組みが生まれたことで、消費者が変容していったという現象です。
これが、今までの分類を書き換える、「ブレークアウェー・ブランド」です。

以上の3種が、無意味な競争を避けて、存在感が際立つ「アイデア・ブランド」の心理論です。
もちろん製品だけではなく、技術やサービスにも同様の論法が成り立ちます。
現在の市場環境を考えると、経営を成り立たせる為には、他者との同質化を極力廃除し、過去の常識に一石を投じて、波風を立ててみる考え方も取り入れていく必要があるのではないかと考えますが、いかがでしょうか。
ハーバード・ビジネススクール教授のヤンミ・ムン氏著、北川知子訳「ビジネスで一番、大切なこと」(ダイヤモンド社刊)より、一部抜粋、参考にしました。