『夏山シーズン真っ盛り』 ― 山の楽しみ方 ―
今回は綱瀬(つなせ)が社員ブログを担当させていただきます。
山に登るには最高のシーズンを迎えています。
平地では気温が30℃を超すこの時期ですが、標高が100m上がると気温が0.8℃程度下がり、
1000mでは8℃、3000m級の山上では24℃下がる計算になります。
さらに風速1mで体感温度は1℃下がると言われていますので、3000m級の稜線で
風速6mの風を受けると、無風の地表面の気温よりもなんと30℃も低い気温ということになります。
涼しさを味わうのなら山の上は最適ですよ。紫外線は直接届きますので強いですけどね。
さて、そんな気温の状況ですから高山では春や秋は一瞬で無いに等しいほどで、
ほとんど冬と夏といった気候になっています。
高山の植物にとっては今が春や秋の気候の様なもので、
夏に高山植物が一斉に開花し、大お花畑を形成するようになります。
写真は高山植物の女王と呼ばれるコマクサです。
群生する高山植物が多い中で、女王は単独孤高に気高く咲きます。
一方大群落としてお花畑と呼ばれて群生して咲く高山植物もあります。
日本には標高3000mを超える山が21峰あります。
3776mで1位の富士山、3067m(14位)の木曽御嶽山、
3026m(19位)の乗鞍岳は尾根続きになっていない、言わば独立峰です。
それ以外の28座のピークは尾根をたどって山々が連なる山脈になっており、
尾根の連なる稜線を雲上散歩して縦走する事ができます。
富山県南部から長野県と岐阜県境を南北に走るのが北アルプス(飛騨山脈)で、
立山連峰、後立山連峰、穂高連峰などがあります。
3190m(第3位)の奥穂高岳、3180m(第5位)の槍ヶ岳など3000m級ピーク計9座を擁します。
写真の槍ヶ岳は日本アルプスの人気者の山で、登山者ならば一度は目指す山ですので、
登山道は大賑わいとなり、登頂ルートを表銀座(東鎌尾根から)、裏銀座(西鎌尾根から)
などと呼んでいます。また、穂高連邦からの南鎌尾根の縦走ルートは上級登山者向けと言われ、
さらに岩登りルートとして難易度が高いのは北鎌尾根ルートです。
ピークの槍の穂先と言われる山頂の隣に、小ぶりの尖んがりピークがもうひとつあり、
これを小槍と呼んでいます。アルプス一万尺の歌詞でアルペン踊りをこの上で踊りましょうと
歌っていますが、無理のある広さです。
長野県と山梨県、そして静岡県との県境を南北に走るのが南アルプス(赤石山脈)で、
白根三山、荒川三山、鳳凰三山、赤石山塊などがあります。
3193m(第2位)の北岳(白根三山)、3189m(第4位)の間ノ岳(あいのだけ=白根三山)、
3141m(第6位)の悪沢岳(わるさわだけ=荒川三山)など3000m以上のピークが9座あります。
3000m級の山は三峰の独立峰の他には、南アルプスと北アルプスに集約されています。
この他に中央アルプス(木曽山脈)、八ヶ岳連邦、加賀白山(はくさん=両白山地)を加えた
中部山岳に2700m以上の高さの山90峰が全部含まれることになります。
南アルプスは北アルプスより一般的に山が大きくゆったりしているといわれるのに対し、
北アルプスは雪が多い分だけコンパクトでありながら急峻な稜線だといわれています。
森林が途絶えて見晴らしがよくなり、岩と這い松と高山植物だけの世界となる森林限界の標高も、
北アルプスは2200mと南アルプスの2400mより低いとされています。
寒いところに行けば行くほど森林限界は低くなるので、東北や北海道の山はもっとぐっと低くなります。
夏が近づいても谷あいに残雪が残るところを雪渓(せっけい)と呼びます。
この雪渓の形を下の山里から見て山の名前が付けられたものが数多くあります。
田んぼの代かきの馬=代馬の文字が白馬と変わった後立山連峰の白馬岳(しろうまだけ)、
菱形の五菱に似た残雪がなまってできた(別説では五匹の龍で)五竜岳(後立山連峰)、
残雪がおじいさんの形なので爺ヶ岳、チョウチョの形で蝶ヶ岳、
ツバメのかたちで燕(つばくろ)岳などです。
ツキノワグマを見かけることもありますが、天然記念物のニホンカモシカ、
稜線まで出ればハイマツ近くには雷鳥やオコジョ(イタチ科)の愛くるしい姿を見ることができます。
富士山の登山がブームになっていますが、一度富士登山を体験されたら
是非中部山岳の稜線縦走にもチャレンジしていただけたらと思います。
富士山で味わえない魅力がそこにはたくさんありますよ。