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『目から鱗(うろこ)が落ちる』 ― 個人の飛躍と店舗の成長について考える ―

2010年03月20日

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この諺は若者が作った新しいものと、小生は誤解をしていました。
調べてみると、1800年以上前の歴史的書物を起源とした諺でした。
新約聖書の中にある「ルカによる福音書」の続編として書き足された、「使徒行法」の中に書かれているものが諺となったようです。
その使徒行法の第九章の「サウロの改心」の中に、「すると、たちまち目から鱗のようなものが落ち、サウロは元通り見えるようになった」とあります。
この書物の英訳版では、「The scales fall from eyes.」となっています。
スケールとは「うろこ」の他に「湯垢」や「歯石」などの意味もあり、「重なり合う垢(あか)」のことも指しますので、「目から垢が落ちる」と訳しても良かったのかも知れませんが、昔の日本人キリシタンは粋な翻訳をしたものです。
この諺の意味は、「あることがきっかけになって、それまで分からなかった真相や本質が、突然はっきり理解できることになる」時に使われます。
目を覆っていた鱗の様なもの(シャッターやゴミかも?)が不意に取れて、ものがはっきり見えるようなイメージなのでしょうか。
皆様にも、今まで見えていなかったものが、何かをきっかけとして、突然に見えて来た体験もあるのではないでしょうか。
また、こつこつと努力を重ねていても、とても前進しているように思えなかったものが、急に脱皮するように急転し、劇的に進化するようになることもあると思います。
世間では、景気の低迷期とも言われますが、窮地に追い込まれた時こそ必死に考えるのも人間です。
思いを巡らせて考えて、劇的進化のヒントを得られる可能性もあります。
今回は、店舗としても個人としても、劇的な変革を経てステップアップをしていく為に必要な発想法について考えてみたいと思います。

《To be と To do》

生まれ変わる、またはゼロから何かを生み出すことを考える場合には、「やるべきこと=To do」と、あるべき姿=To be」の二つの方向からまず考える必要があると言われます。
企業経営でも個人の変革でも、この両面から考えた上で、どちらから着手していくかを決めるのが基本です。
次に、「やるべきこと」を考える場合にも、「何をやるか=What」と、「どのようにやるか=How」を考えていく必要があります。
考えれば考える程、悩みも出てくるはずです。
なぜなら、ほとんどの場合には「やってみなければ本当はわからない」からだと思います。
試行錯誤とは、試すことと失敗することの繰り返しによって、目的に近づきながら進んで行くことです。
「思考」ではなく「試行」なのです。
考えて終わらせるのではなく、試しに実行してみて、成功していくものなのです。
上手くいく例のほとんどは、いろいろやってみたからこそ、そこまでたどり着いたという感覚に近いものかも知れません。
好きな分野ではなく、苦手なものに歯を喰いしばって取り組んでいるうちに、一所懸命の汗や涙が、ある日突然に結実し、開眼するかのように上手くいく例はあると思うのです。
嫌いだったものがいつの間にか、一生付き合えるような大好きなものに変わっていくことは、こういった流れで起こる場合もあると思います。
勿論、「あるべき姿=To be」を考えて、それを強く意識することによって実現の可能性が高くなることは間違いありませんが、意識するだけで「実行すること=To do」が無ければ、実現する可能性は限りなくゼロに近いものになってしまいます。
困った時には、「思考」ばかりに片寄りがちですが、考えても判断できない場合には、思い切って「試行」してみるのも大切なことだと思います。

《さなぎが蝶に》

静かで動かなかったものが活発に動き出したり、地味だったものが美しく変身したりする瞬間には、私達は感動を覚えるものです。
勝ち越しがやっとだった力士が、ある時急に優勝争いをするようになり、大関を狙えるまで強くなってきた時。
打てなかった若手打者が急にホームランを連発する打者に変身した時。
そして、最下位争いをしていたサッカーチームを応援し続けていたら、そのチームがある時を境に優勝争いができるまで変身した・・・等々。
見守り続けてきたものにとっては、大変身する時を見ることができて幸せになるものです。
中でも、この上ない最上級の感動ともいえるのは、赤ちゃんの生まれる瞬間に立ち会えることだと思います。
生命の誕生の一瞬に勝る感動は無いのではないかと思います。
さなぎが蝶に変化する時も、まるで死んでいたものが生き返るが如く思えるものかも知れません。
蝉の幼虫が羽化する時、やごがトンボになる時なども、変化が余りに激的なだけに、それに近い衝撃があるかも知れません。
手塩にかけた部下や後輩が、出来なかったことが急に出来るようになって大きく飛躍する局面に立ち会うことが出来た時、指導してきた先輩は今までの教育に手間をかけた時間や苦労した経験があればある程、嬉しい思いが強くなるはずです。
感動を通り越して、幸福感まで感じるものかも知れません。
できるように進化した側も、転んでばかりいたのが初めて自転車に乗れるようになった時と同じような喜びを感じるはずです。
こういった、「さなぎが蝶に変わる瞬間」に立ち会えた時には、周囲の人達も含め大きな感動と一体感を得られ、個人も店舗も文字通り脱皮するかの如く、激的に進化ができるような空気に包まれると思うのです。

《WhatとHow》

「What=何をやるべきか」は企業や店舗では経営者がしっかりと考え、店舗経営や企業運営の方針として打ち出し続け、メンバーに植え付けていく必要があるものです。
個人レベルでは、仕事の中で「何をやるべきか」は、サロンオーナーから発せられる理念や方向性を実現するために、「自分はどう動くべきか」(To do)を考えることが大切です。
たとえ個人レベルで、素晴らしい新しい試みを仮に考えついたとしても、それと所属組織の方向性とが逆方向のものであった場合には、「やるべきこと」ではなく、「やってはいけないこと」となってしまいます。
現在の社会情勢では先が読みづらく、何が正解か判らない面があります。
数年前には誰も想像できなかったようなことが、次々と起こっている世の中だからです。
そんな中で、経営者としては、何をするか(What)をあれこれ考え過ぎて足踏みするよりは、思い切ってやり方(How)を変えてみる方が早い場合もあるのではないかと思います。
思い悩んでいる時に、「やり方(How)」を変えてみたら、次に「やるべき事(What=何))も自然に見えてきたということはよくある話です。
つまり、「何をやるか=What」を考えるよりも、「どうやるか=How」の方法論を優先する考えに切り換える勇気も大切だと思うのです。
それを繰り返すことにより、逆に「To do=やるべきこと(行動価値)」も実感しやすくなると思います。
そうすると、次に「To be=組織や自己のあるべき姿(態度価値)」も見えてくるのではないでしょうか。
この順番は今まで考えられていた方法と全く逆からのアプローチ法です。
企業の繁栄でも、個人の成功でも、まずは理念や、目標としてのあるべき姿をイメージして、それに向かって計画をして、達成実感を積み重ねていき、修正や組み立て直しをしながら夢の実現に向けて進んでいくという順番が今までの発想でした。
勿論、あるべき姿をイメージして、その目標を口にすることにより、自分の決意が固まり、実現するように身体や脳が動くようにもなり、応援する人達が周囲に現れてきて、実現確率が高まるという面もあります。
しかし、理想型を強く意識すればする程、今までやってきたやり方、方法論に固執し過ぎてしまう傾向があるのも人間心理です。
「やり方」の方法論の正しさに執着してしまうと、つい感情的に譲れなくなってしまい、一番大切な目的を見失ってしまうという落とし穴に陥る場合があります。
自分の慣れ親しんだ、好きで得意な「やり方」にこだわり過ぎると、「やり方」(=手段)が目的よりも優先してしまいかねません。
閉塞感を感じる局面では、「これまでのやり方も有効だったけれど、そろそろ新しいやり方を身につけるべき時かな」と発想転換すると、次の新しい一歩を踏み出すことができて、「目から鱗がはがれる」チャンスになるかも知れません。

《天まで飛べ》

「To be to be,Ten made to be.」
高校の卒業式後の教室で、武田鉄矢を気取った担任教師から「訳してみろ!」と黒板に書かれました。
「テン メード トゥ ビー」の意味が解らず、誰も答えられずにいると、「君たちは発想が貧困だ」、「もっと自由な発想をして生きていけ」との主旨の担任からの指導となりました。
実は、これは英文ではなく、「飛べ、飛べ、天まで跳べ!」をローマ字で表現したものだとのこと。
「発想を変えれば見えないものが見えてきて飛躍できるから、原則に捕らわれずに自由な感性でもの事を観なさい」とのアドバイスでした。
「あなたが変われば、まわりが変わる」の通り、自分の人生態度(=To be)が変われば、周囲の人たちの「あり方」も変わってきます。
経営者ともなれば、自身の「あり方=To be」の変化によって周囲が変わる効果は絶大です。
従業員のみならず、仕入れ元、金融機関、関係業者、そしてお客様に対しても大きな影響と変化を与えます。
経営者は、考えても考えても打開できない問題に直面することも多いのではないかと思います。
「どうすれば(How)」「何をすれば(What)」といった「やるべきこと(To do)」も判断できずに行き詰ってしまったら、「あるべき姿(To be)」までも捨てて、周囲の人達に対する自分の見方や考え方を変えて行動してみるのもひとつの方法です。
それまでの自分の経験(特に成功体験)を捨てて、周囲の人に相談してみる(場合によっては助けを求めてみる)方法もあります。
経営者ばかりではなく、人間は、迷い始めると袋小路に入り込んでしまい易く、一人で考え込んでしまいがちになるものです。
経営者は、特にそのような時に孤独を感じてしまって、人に相談しにくくなるのではないでしょうか。
今まで相談したことのなかった周囲の人達をアテにしてみると、応援したい、助けたいと思う人が次々と名乗りを上げてくれるかもしれません。
サロン経営者をお手伝いする我々のような立場の者は勿論のこと、サロンスタッフの皆様も同じような思いで味方になり、手助けしてくれる場合もあるのではないでしょうか。
昔は、肉体労働と頭脳労働という単純な分け方で働くことを色分けしていましたが、今は、感動労働が大切であると言われています。
知識や技能を高めることによっての労働の満足感も必要ですが、皆が一緒に働ける感動を一生の喜びとして、共感し合えるといった満足感を得られる店づくりが大切な時代と思います。
人は自分の存在意義を認められていると感じる時や、人に対し役立っていると感じる時に、幸福感ややり甲斐を感じて力を発揮できるものなのです。
それが、感動労働につながり、皆が最大限の能力を発揮できる環境です。
そのためには社会に喜ばれるサロンづくりをスタッフ全員で考え、ひとりひとりが脱皮したことを皆で称賛し合い、一緒に高め合えるのが理想です。
サロンも個人も、「さなぎから蝶に変わる喜びの瞬間」を味わえるよう、夢と感動を創造することを全員で一丸となって目指していくことが重要だと感じますが、いかがしょうか。

今回は、神戸メンタルサービス合資会社・所属カウンセラー・みずがきひろみ氏のブログ「新しい自分になる」を参考にしました。