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『青は藍(あい)より出でて藍より青し』 ― 新人の皆さんの成長を願って ―

2010年05月20日

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今回のタイトルの諺は、中国の古典「荀子」から出たものだそうです。
使用される意味には二通りあります。
① 人は学問や努力によって、持って生まれた本性を超えることができる。
② 弟子が師匠の学識や技量を超えること。
現在は、②の意味で使われることが多いようです。
元々青色の染料は、タデ科の藍という草から取ったエキスでつくり、その青が原料の藍より青く美しくなることから、使われるようになった諺です。
他にも②の意味の諺として、「出藍(しゅつらん)の誉(ほま)れ」、「氷は水より出でて水より寒し」もあります。
英語では、「The Scholer may be better than the master.」(弟子が師匠をしのぐことがある)と、かなり直接的な表現をするようです。
弟子が師匠よりも抜きんでることや、教えた人よりも教えられた人の方が勝ってしまうことはよくあります。
特に、ゴルフ、野球、相撲などのスポーツ界では、コーチや、親方の実績を上回る選手は沢山出現します。
将棋や囲碁の世界、絵画や音楽といった芸術の世界、落語等の演芸の世界でもよくあることと思います。
師匠が自ら成し得なかった思いが、弟子に託された執念となって乗り移り、結実することなのかも知れません。
しかし、むしろ大半のケースは、教える側が教える対象の良い部分を伸ばして上げる才能を持っていたから師匠を超えたのではないかと思います。
逆に「名プレーヤー、必ずしも名監督にあらず」という格言もありますが、優れたプレーヤーであっても、名監督になれない場合も多いと思います。
今回は、入ったばかりのフレッシュな人材をどう育てていくかを、指導者側の立場と、勉強していく側の心構えとの両面から考えてみたいと思います。

《朱に交われば》

「朱に交われば赤くなる」という諺があります。
「水は方円(ほうえん)の器に従う」という諺もあります。
人は環境や人間関係に感化され、固有の形をもたない水は、容器の形に従って四角く(=方)も、丸く(=円)もなることを言ったものです。
英語でも、「Water leads itself to its vessel.」(水は自らその容器に導く)と、水に例えて表現されます。
純白無垢なものほど、朱に接すると赤く染まり易いものです。
「蓬(よもぎ)に交わる麻」という諺もあり、茎の曲がった蓬の中で育てた麻は自然と曲がりくねって育つことから、悪人と交われば、善人も悪に染まってしまうという意味で使います。
逆に、「麻の中の蓬」という諺は、まっすぐに伸びる麻の中で育てば、曲がりやすい蓬もまっすぐ伸び育つもので、人間も周りが善人ならおのずと感化されて善人になれるということの意味で使われます。
人を育てる為には、環境整備と導く側の姿勢や態度が非常に重要で、教えられる側はそれに大きな影響を受けて育っていくものなのだと思います。

《育てる姿勢》

教育と訳される「education」はラテン語から出てきたそうです。
ラテン語の「educatio」が語源で、最初の「e」は「引き出す」という意味で、「ductus」=「資質」を引き出すという意味だそうです。
博士や医者の「doctor」や、教義、基本原則の「doctrine」なども、同じくこの単語が語源です。
西洋の学校教育制度を明治初期に日本が取り入れた際に、教えて育てるという「教育」という言葉をあてがって訳したことによって、ラテン語起源の「資質や個性を見出し、引き出してあげて伸ばす」という本来の意味が、日本においては少しニュアンスが変わってしまったのかも知れません。
勿論、教えるという行為では、基本を徹底的に繰り返し、体で覚えるまで叩き込む様に訓練することも、時には必要かも知れません。
しかし、これは教育のごく一部分の側面で、記憶させてテストするという日本の学校教育で長い間染み付いてしまった慣習から、離れた立場で育てていくことが必要なのかとも思います。
それには、若いフレッシュさのあるスタッフを、新人への教育係として、教える側に思い切って抜擢していくのもひとつの方法です。
これから力をつけていって欲しいと考えている少し先輩のスタッフに、後輩の教育指導を担当させるのです。
人に教えるという事は、当然ながら自分が理解していなくてはいけません。
人に教えるためには、教わる側の何倍もの勉強が必要なのです。
何度も何度も自分が理解できるまで勉強し、人に何度も繰り返し説明していくことで、教える側のスタッフもスキルアップしていけるのです。
また、教育を任されたことで、自分に対する自信を持つこともできます。
期待をされると、それに応えたいという心理になり、どう教えるかを精一杯考えて工夫していくものです。
新人側も、年の離れた大先輩から指導されるよりも、自分の年齢に近い少しだけの先輩から教えられる方が受け入れやすい側面もあるようです。
ずっと昔に教えられる立場であったベテランや中堅スタッフは、自分がどんな点が理解しずらかったか、どんな気持ちで受けていたかなどを忘れてしまっていることが多いものです。
逆に少し先輩は、自分が何がわからなかったか、どんな時に不安や反発を感じたかも覚えているので、教えられる側の立場に立って、理解し易く説明する努力をしていく上、素直に受け入れられるにはどう話せば良いかも考える配慮ができるはずです。
人間は、教える側の立場に立ったときに成長するスピードが加速するといいます。
そして、先輩は任せられた自分が期待されていると感じられることですから、それに応える努力をする心理が働き、成長していくものなのだからです。
ですから、そういった先輩を選んで指名したら、「それだけ貴方に期待しているよ」としっかりと意思表示をして、応援するところは応援し、あとはその指導係を見守りながら、信頼して任せ切ることが大切だと思うのです。

《先人の言葉から新人へ》

新しい仕事に身を置いた皆様には、人生の大先輩の方々が残した語録から、参考にしてもらいたいと思います。
阪急グループ創業者の故・小林一三(いちぞう)氏は、「下足番を命じられたら、日本一の下足番になってみろ、そうしたら誰も君を下足番のままにしてはおかぬ」と言いました。
そういえば、後に豊臣秀吉となる木下藤吉郎が、まだ猿と呼ばれていた足軽だった頃に、織田信長の下足番をして、懐に入れて温めた主君の草履で功名を得た逸話もありました。
任された仕事をまずは受け入れて、それを前向きに、一番になる様にやっていれば、その人のきらりと光るものが、他の人からも見えてきて、認められて次々とチャンスが必ず訪れます。
どんな仕事も前向きに捉える習慣が備われば、必ず成長できます。
「私はこんなことをするために、この仕事に就いた訳ではない」との文句をこぼす人は、どんな職業にでもいるものだと思います。
その一方で、どんな仕事を頼まれても、嬉々として仕事に取組んで高い評価を受けていく人もいるものなのです。
米国の自動車三大メーカーひとつ、フォードの創業者であるヘンリー・フォード氏が成功の秘訣について聞かれた時に答えた言葉が、「常に相手の立場に立って物事を考えること」です。
相手の立場で考えられれば、お客様や経営者、上司や先輩スタッフなどが何を望み、どう考えているかを推し測ることが可能になります。
必要に応じて、先に手を打って準備したり、対策を立てることもできます。
相手の立場で考えられれば、先輩やお客様から、「使われ上手」になります。
期待された役割をきちんと認識して、行動することができます。
ですから、相手の立場に立って考えられる人は、必ず仕事のできる人間になっていけるものなのです。
それでは、相手の立場で考えられるようになる為にはどうすれば良いのか。
キャノン電子㈱社長の酒巻久氏は、著書の中で次の様に言っています。
それには、「人に親切にする事」だと。
道で転んでいる人がいたら助け、道がわからず困っている人がいたら、教えてあげることだと酒巻氏はいいます。
そうやって、いつも人に親切にするように心がけていれば、周りに困っている人はいないかと常に目配り、気配りができるようになっていくものです。
つまり、親切の結果で周りの人の立場を思いやれる人間になっていけます。
だから、まずは親切になることです。
それも「損得抜きで人に親切にする」習慣を身につけることが大切です。
酒巻氏はまた、「仕事は人間に始まり、人間に終わる」とも話しています。
そもそも仕事は一人では出来ず、無数の人達との関係の上に初めて仕事は成立するものです。
つまり、人間がわからない限りいい仕事はできないと彼は説いています。
仕事で最も大切なことは、「人間を知ろうとする謙虚な姿勢」で、この姿勢さえあれば、仕事で成功する可能性が大きく拡がるとの主張です。
しかし、実際には、勝手に自分で自分を規定してしまい、可能性を狭めてしまっている人が多いのではないかと、酒巻氏は考えています。
「どうせ自分にはできっこない」などと自分で自分に枠をはめる癖を持ってしまったり、逆に「自分はできる人間だ」とプライドを持ち過ぎて、素直に学ぼうという意志が足りなくなってしまうなどの欠点が出てしまう人が多いと酒巻氏は嘆いています。
人の能力は考え方ひとつで決まるものだとも言われます。
考え方の悪い癖を持たず、「やればできる」と「素直に(人間を)学ぶ」、この二つの考え方の習慣を持てたなら、仕事ができる人間になるのは容易であると酒巻氏は結んでいます。
フレッシュな人材は業界の財産です。
新人を迎え入れる側は彼らの成長を願って環境整備をする事が重要であり、指導する者は、新人達が素直で前向きな考え方で仕事に取り組める様に、自分達も覚悟を決め導く事が大切だと考えますが、いかがでしょうか。

今回は、神戸メンタルサービス合資会社のカウンセラー・大門昌代氏のブログ「社員をスキルアップさせるには?~与えることの効果」、キャノン電子㈱社長・酒巻久氏著「仕事ができる人に変わる41の習慣」(朝日新聞出版刊)を参考にしました。