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M-press 『雨降らざれば、虹も出ず』 ― 一年で一番劇的に変化する時期には ―

2014年03月29日

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お気づきの方も多いと思いますが、当コラムのスタートのタイトルは、12年ほど前から『ことわざ』を使わせていただいております。

ことわざは、漢字表記では『諺』と書きます。

先日、尊敬する人生と経営の大先輩と勉強会でご一緒する機会を得た際に、諺の漢字の意味について教えていただきました。

右側=つくりの『彦』は、古くは(神話時代にまで遡る)『神様』を意味する言葉であったということです。

『海さち彦』『山さち彦』など神様の子孫をそう呼んだ流れの漢字ということです。

今でも男性の名前に使われていますね。

余談ですが、田原俊彦さんも近藤真彦さんも、神様ならご自身達も喜ぶかもしれませんね。

『言ベン』に『神の子孫(使い?)』だとすると、どういう意味を表現しているのでしょうか。

『先達が残したありがたい言葉』といったことで、過去の史実や体験に基づいて、子孫や後継の人々に贈る、生き方の知恵や規範、戒めなどといった神のことばの意味なのだと思います。

今号のタイトルのことわざは、『雨降って地固まる』(=嫌な雨も、かえって都合よく地面を固めてくれることから、もめ事があった後は、かえって物事がよい状態におさまるという意味)に近い表現です。

しかし、もっと強い意味が込められていて、『素敵な虹が出るような素晴らしい結果の前には、多少の苦難はあるものですよ』といった意味が込められていると思います。
英語の慣用句では、『After rain comes fair weather.』(=雨の後には必ず晴天が訪れる)というものがありますが、むしろそれよりももっと強い意味の慣用句『Nothing comes easy.』(=何事も簡単にはやって来ない=努力)に近い意味かもしれません。

近い意味のことわざは、 『楽は苦の種苦は楽の種』(=いま楽をすれば後で苦労しなくてはならないが、いま苦労すれば後で楽ができるという、苦楽は相伴って起こる)、『喧嘩の後の兄弟名乗り』、『嵐の後は凪』『楽あれば苦あり』(=楽しいことがあれば、その後には苦しいことがある=江戸系いろはかるたのひとつ)などたくさんあります。

また、男女間、夫婦間の関係では、古今東西揉め事は尽きないようで、こういったことわざを使って表現されてきた歴史があるようです。

『The falling‐out of lovers is a renewing of love.』(=恋人どうしのけんかは、恋を新たにしていく)と英語でも表現されるようです。

まさに、雨降って地固まるです。

三月末は美容業界繁忙期でもあり、何かと多忙な区切りの月の上に、消費税の増税もあります。

一方で、日本では卒業や会計年度の終了、企業決算などで、入学、就職、転勤などの流入流出等で一番活性度が高い時期にもあたります。

美容プロフェッショナル業界にも、新しい人材がたくさん入ってくる時期となります。

多忙な時期にサロン内外に新しい人が入ってくるので、さらに多忙を極めて接遇レベルが低下してきがちな恐れもあります。

今回は、例年にない混乱が予測される3月末の時期を経て、いかに虹を見ていくかということを考えてみたいと思います。

《雨晴れて笠を忘れる》

雨がやみ、晴れてしまうと、かぶっていた笠のありがたみをとかく忘れてしまいがちです。

そんな意味から、苦しいことが過ぎてしまうと、その苦しさを助けてくれた人のありがたみをつい忘れてしまうということをたとえて表現することわざです。

『のど元過ぎれば熱さを忘れる』『病治りて医者忘る』『暑さ忘れれば陰忘れる』『魚を得て筌(うけ、うえ)を忘れる』など、近いことわざが多数あります。

『筌』とは、魚が入ると出られなくなる仕組みの竹製の漁具で、魚を捕獲してしまえば、必要だった『筌』は不要となり、そのありがたみをつい忘れてしまうという意味からのことわざです。

閑散期にご来店いただいたお客様に、ようこそ来ていただいてありがとうございますとの気持ちを込めて、特別な接遇をして差し上げることは容易です。

気持ちにも、時間的にも余裕があるので、会話や気遣いなどの想いを乗せて接遇可能です。

しかし、繁忙期の繁忙時間帯となると、同じような気遣いができるゆとりがなくなってくることがあるのかと思います。

三月末から四月初旬はそんな時期のひとつですので、注意が必要です。

前述した通り、日本ではこの時期が一番の人口流動期です。

たくさんの人が転居し、お店のエリアに流入する一方で、逆に固定客でいらっしゃった自店のお客様が引越しによって遠方に転出していくことも多くある時期なのです。

言い換えれば、一年で一番新規のお客様の獲得が出来る可能性の高い時期でもある一方で、新規のお客様の獲得がうまくできず、何もしないでいると、既存のお客様が一番減ってしまう可能性も高い時期だとも言えるのだと思います。

厄介なことに、客数が多い時期だけに、忙しさや売上規模に目がいってしまいがちで、その時点での失客を見落としてしまいがちでもあります。

そんな時期に、多忙で精神的時間的に余裕がないとの理由で、お客様の接遇がおざなり(御座なり=その場の間に合わせ・いいかげん)や、なおざり(等閑=注意を払わない・おろそか・いいかげんにしてほうっておくこと)になっているとお客様に受け取られた場合には最悪の結果となってしまいます。

多忙な時期にご来店されるお客様は、ある程度待つことと時間がかかることを覚悟しながらも、たくさんあるお店の中から、自店を選択していただき、それでも良いとまで考えて来店していただいているありがたい特別なお客様だと思うのです。

一方、初来店いただくお客様も、たくさんあるお店の中から、勇気を持って店内にまな板の上の鯉の心境で飛び込んできてくださった、ありがたいお客様なのだと思うのです。

サービス提供者側のスタッフに心のゆとりがないと、こういったお客様の心情をくみ取ることが難しくなってしまいます。

来店客がいっぱいの状況になると、気持ちの余裕のなさから、一人一人のお客様の気持ちを注視できずに、言葉は悪いかもしれませんが、お客様をさばくとか、仕事を片付けていくといった時間内で回していく発想が無意識のうちに出てしまうのも人間の悲しい性だけに、心配でもあり怖いことでもあります。

おひとりおひとりが大切なお客様であることは当然頭には入っているものの、流れ作業のチームワークで仕事をしている現在の美容室の形態では、次から次へと受け渡してサービスをしていく間の誰か一人が、お客様の個人としての感情を見てあげられずに、たくさんのお客様の内のひとりとぞんざいな(いいかげでなげやりな)対応をとると、致命傷になりかねません。

繰り返しご来店いただいておられる上顧客の皆様は、既にお店の大ファンであったり、応援者であったりもするものです。

したがって、多少の不行き届きでも見てみぬ振りをしてくださったり、苦言を呈してくださったりしながらも、次回も来店してくださることが多いものだと思います。

しかし、そこまでいっていない馴染みのお客様は、助言も苦言も無しに黙って去ってしまい、次回の来店がなくなってしまう可能性があります。

ご多忙時こそ、接客接遇マナーや心配りに注意したいものです。

雨が降ろうが槍が降ろうが

たとえどんな困難があろうとも必ずやり遂げるという気持ちを表す表現です。

『万難を排す』『火が降っても槍が降っても』などともいいます。

再三述べてきた通り、4月度は地域流入人口が一番多い月、そして地域転出人口が一番多い月=固定客を失う可能性が高い月なのです。

この時期に、新しいお客様に自店のファンになっていただき、リピーターになっていただく努力をしていきませんと、自然流出固定客が出て絶対客数の減少につながってしまう可能性が高いのです。

それをふまえて、『フレッシャーズキャンペーン』とか、『○□市へようこそキャンペーン』などの、新規のお客様にお店に来ていただき易くする施策を準備しておきたいところです。

消費税の増税後の4月~6月は前年ベースの売上げ比較では落ち込んで苦労するであろうとの憶測も頻繁に耳にします。

しかし、それが仮に予測通りの経済環境、市場環境、業界環境、消費者意識動向だったとしても、たくさんのお客様でいっぱいになるお店はたくさんあると思うのです。

もしも、そのような低迷した状況下に置かれたとしたならば、①新規のお客様にたくさん来ていただいて、客数の目減りをカバーする、②まったく今までになかった新しい分野のメニューなどで、新しい売上げを創造する、③関連商品などの今までお勧めしていなかった新しい分野の製品販売で、売上げ創造していく…など、シンプルに申せば、こういった三種のものにいかに味付けしていくのかしかないと思われるのです。

こういった施策は、待っている消極的受動的姿勢では願いは叶わず、積極的能動的姿勢でなければ、成就できないものだと思うのです。

三月末から四月初頭は確かに忙しい時期ではありますが、こういった意識を持って準備を怠らずにいきたいものです。

《雨は花の父母》

雨は花にとって養い育ててくれる父母のようなものであるという意味で使われることわざです。

新スタッフを迎え入れられるサロン様も多いことと思います。

スタッフ教育とは、まさに時間をかけてコツコツと水を与え続ける辛抱強い行為だと思います。

育てることを繰り返ししていると、ふとある時点からそんな風に考えるようになってきました。

店主や店長が父母として水を与えていくのですが、新人の花達に同じ量の水を同じ時刻にまんべんなく一様に与えるのかというと決してそうではない様です。

必要な時に、必要量をそれぞれの花に時間帯を変えて与え、場合によっては、水を与えずに肥料だけ与える花も見極めて、花の状態と個性と相談しながら育てていくものだと思います。

兄姉にあたる先輩スタッフもそんな指導をしながら自らも成長していくということでしょう。

ただでさえ少なくなってきた免許取得者が業界を離れずに、自ら選択した職業に誇りと生きがいを感じて、美容職業人として大成していくために必要な育成を業界に所属する者皆でしていくことが、大切な時代に入っていると思うのです。

《雨だれ石を穿(うが)つ》

雨だれが、長い間に石に穴をあけるように、小さな力しかなくても、長い間続けて行えば成功するというたとえで使われることわざです。

英語では、『Constant dripping wears the stone.』(=絶え間ないしずくは石に穴をあける)と表現されるようです。

近いことわざでは、『石に立つ矢』『思う念力石をも徹す』などがあります。

硬い石でも雨だれが打ち続けると穴が開くのと同様に、人間も少々の力でも長く続けると大きな力になっていきます。

若い人はそんな影響も大きく受け易く、劇的な変化をします。

良い例で考えると、よき習慣づけができれば、成長スピードが増して店舗や会社にまで新人の皆様がよき変化をもたらします。

逆に情熱に燃えて入ってきた新人の皆様の強い意志が、先輩スタッフの日常に慣れ切った惰性の挨拶や仕事振りが目に入ると、フレッシュメンバーの固い意志(硬い石)にも、繰り返しの雨だれ(先輩の対応)で穴が開いてしまうかも知れません。

大きな声で元気良くキビキビ動いてきた新メンバーが、一ヶ月もすると先輩社員と同じレベルの声だしや挨拶になってきたということは、よくあることです。

良く変化する場合もありますが、残念ながら悪く変化することの方が多いように思えます。

実際に店舗でも会社でも、過去繰り返し見てきた光景なのです。

いつも同じメンバーで空間を占めていると、安らぎ間や安心感は得られ易いですが、マンネリ化や停滞感が生じ、良き変化が起りにくいといわれます。

新人スタッフでも、新顧客でも、フレッシュな人材が店舗に大勢入ってきた時には、活性度が高まり変化が起きやすくなります。

そんな、自店を高める大チャンスの時期と認識しておきたいものですが、いかがでしょうか。

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ビューティ-クリエータ-のための情報誌   No.206 マックス企画室