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M-press 『横槍(よこやり)を入れる』―価格は誰が決定?消費者マインドの考察―       

2013年05月01日

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戦っている両軍の横から、別の一隊が槍で突きかかる意味からこのことわざができました。

他人の話や仕事に、関係のない人が、脇から文句をつけたり、口出しをしたりすることのたとえとして使われます。

英語では、『to butt in』(=口出しする)との慣用句になっているようですが、『butt』とは剣や銃等の武器や、道具類、棒などの端っこのことを指した名詞で、それが発展して頭やツノで激しく突く、ぶつかる、不意に出くわすなどの動詞としても使われるようになったようです。

ボクシングで頭がぶつけてしまう反則・バッティングや、プロレスリングで頭突きの意味のヘッドバットはこの『butt』のようです。
予断ですが野球のバットやこうもりは、『bat』だそうです。

さて、来年四月の消費税の3%加算増税に向けて、その表示方法について、国会では増税分の価格転嫁を円滑にする特別措置法案の審議が始まりましたが、『消費税還元セール』などの表現方法を巡って大手小売業から反発が相次いでいます。

今回は少し政治的な要素が絡みますが、政治がどこまで商取引に介入できるのか、この国際化時代に価格統制に近い指導を果たして政府ができるものなのかということ、そしてそもそも適正価格って何なのといったことを考えてみたいと思います。

《喧々囂々(けんけんごうごう)

喧々も囂々も騒がしくしゃべることをいいます。

大勢の人達がやかましくしゃべりたてて、がやがやと騒々しいことをあらわすことわざです。

16年前の消費税が3%から5%に上げられた直後になる翌年明けに、消費税還元セールと称し大手スーパーの多くが5%の消費者還元を実施しました。

全商品5%値引きをした上でレジ集計し、その上で値引き後の合計金額に5%を課税する方法や、お買い物一万円分に500円の商品券を出すなどの方法を大手小売業は当時行いました。

結果、スーパーや家電量販などの大手小売店の売上は大きく伸びたところが多く、「支出を控えていた消費者を刺激するのに一役買った」との自負が大手小売業の皆さんにはあるようです。

しかし、一方で大手の還元セールに押され、経営体力の弱い中小・零細の小売業は打撃を受けたともいわれています。

中小・零細企業に大手と同じような還元セールを同じようにやれといっても難しいともいわれています。

審議中の特別措置法の中で政府は、『消費税に関連したセールは認めない』という趣旨を貫くと宣言しており、セールの表現方法に対しても、良否のガイドラインを明らかにして、表現方法にまで口出しする構えを見せています。

例えば、

①   春の感謝セール…使用可

②   消費税還元セール…使用不可

③   消費税の価格据置きセール…使用不可

④   価格据置きセール…今後の検討課題

⑤   全商品3%値下げ…今後の検討課題

など、ガイドラインを示すといっています。

スーパーなどでつくる日本チェーンストア協会の会長・清水信次氏(ライフコーポレーション会長)は、販促に法規制は疑問との立場を明確にした上で、「小売業の販売推進を法律で縛ることには違和感があり、セール自体を自粛する動きが起きかねない」と警鐘を鳴らす。

海外にも進出しているイオンの岡田元也社長は、「くだらない議論。政府は国民の生活を考えておらず、小売業者のことも信頼していない」と強い反対姿勢。

ユニクロ=ファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏にいたっては、「法律をつくること自体理解できない。それで先進国か」とけんもほろろにばっさり。

他にも、「重税感の軽減につながる『還元』をうたえないのはおかしい」など、大手小売業の経営者からは特別措置法案への反発が相次いでいます。

《侃々諤々(かんかんがくがく)

『侃々』は強くまっすぐなようすで、『諤々』は臆せずにありのままをいうようすをいいます。

意味としては、何ものにも臆せずに、信ずることを真っ直ぐに主張することをいった諺です。

消費税の表示方法についてももめているようです。

来年2015年4月の税率の8%引き上げから、二年後の2017年3月末までは税抜き本体価格の外税形式が認められるものの、その後は内税価格の税込み値段の表示が義務付けられていることについても反発する声が上がっています。

この二年間の移行期間に認められている一万円本体価格の商品の表示方法は、①~③です。

①   10800円(税込み)

②   10000円+税800円

③   10000円(税抜き)

× 10000円…使用不可

となっています。

さらに問題を複雑にしているのは、今回の消費税の税率アップが、5%(現行)→8%→10%へ増税の二段階方式をとるという点です。

一度で10%まで一気に税率アップをしてしまった方が、何度も商品タグやPOPなどの価格札を直す必要が無く、中小零細企業には経費や人的コスト負担が少ないとの主張もあります。

それに加えての税抜き表示の撤廃となるとさらにコスト負担が増えてくるとの試算もあります。

政府側は、消費者の迷いを無くし誤解をさせぬように保護をする目的の公正なルールだと主張しますが、いまひとつ説得力に欠けているように思います。

さらに小売業が安売りをすれば、仕入れ価格をたたいて、中間卸業者や製造業者の負担が増えて体力をそいでしまう状況にならぬように守ると主張していますが、税額表示を内税(税込み)表示一本化するということは、パッケージやビンを取り替えたり、在庫を処分したりするリスクが増える上に、消費者にも本体価格が分かりにくくなるデメリットもあるといわれています。

政府側の消費税増税を実行し易くすることの目的に主眼をおいた強引な手法には侃々諤々だけでなく、『鶴の一声で決めてしまえとの思惑が見え隠れしていると小生には思えます。

《横車を押す》

横車を押すとは、自分の思い通りにしようと、筋道の通らないことを押し通すたとえでつかうことわざです。

前後にしか進まない車を横から無理に押して動かそうとする意味から使われます。

もうひとつ、『横紙破り』という同じ意味のことわざもあります。

こちらは、そういうタイプの人に対しても使う場合があります。

和紙の目は縦に通っているので横には破りにくいモノなのに、それをあえて無理やり横に破くことからことわざになりました。

政治が介入して価格政策を政府が統制しかねないやり方は、時代錯誤も甚だしい非常に違和感がある政策であると、小生も反対の立場をとります。

適正な価格とは、そもそも誰が決めるものなのでしょうか。

製造者が決めるのでしょうか。

小売や中間業者のような商いの実行者が決めるのでしょうか。

はたまた、お客様(購入者)が決めるものなのでしょうか。

少し前までは、需要と供給のバランスで価格は決まってくると教えられていました。

確かに戦後の高度成長期の時代までは、物不足もあり、家にあるものも限られていたため、テレビ・洗濯機・冷蔵庫の三種の神器や、カー・クーラー・カラーTVの3Cなどはメーカーのいい値で価格が付けられ、少ない品種から消費者が努力してお金を貯めて買っていました。

需要に比較し供給量が不足していたからです。

テレビのように持っている人が増えて需要が減り、製造量が多くなりすぎて供給が増えると価格が暴落してきます。

最近のシャープやパナソニックの不振はこのあたりを読み違えて、大型の工場に大きな設備投資をしすぎてしまったことが原因ともいわれます。

また、医薬品、化粧品、本などの安全性にかかわるものや、特別に定められたものには、再販制度というものが設定され、設定価格が守られ値引きできない特例が存在しましたが、医薬品以外はこの制度も撤廃され、医薬品についてもジェネリックという同じ成分でも安価品を認めるようになりました。

戦後の食糧難の時代から国民の主食を確保するという目的で、米は長い期間に渡って政府が一括して農家から買い取り、同じ価格で販売し流通していました。

多くできすぎるとみると、減反政策で米から他の農作物に転換強制までして政府が総量調整していました。

品種改良の努力やかかる手間の違いなど、味もコストも違うのにまったく同じ価格で取引されて、かつ特定のルートで販売するという社会主義的形態が昭和末期まで採られていたのです。

現在は、スパーマーケット等の販売ルートも広がり、銘柄や味や産地によって自由な価格設定ができるようになっています。

私達の理美容業も現在は生活衛生のくくりですが、環境衛生業として長い間、公衆浴場等と同様に、お客様の感染病を防ぐなどの衛生保持名目で、地域同一技術料金や営業時間等が横並びで定められていました。

タクシー料金も地域同一賃金制がとられていましたが、現在は選択の余地ができてきました。

誰が価格を決めるのかについての答えは、お客様が一番近い答えなのですが、正確にはお客様の満足度が一番大きな要素です。

家で手をかけていれた上級コーヒーよりも、コーヒーショップで飲むコーヒーが高かったり、同じお酒のボトルでも酒屋で買うと安いのに、居酒屋、寿司屋、クラブと変わると価格が高くなったりするのは、雰囲気と体験を楽しむ時間への満足感で適正料金は変わる事の証明なのです。

消費者心理で決定するのです。

理美容の料金も同様と思います。

価格は国から横車を押される時代ではないと強く思うのです。

株式会社マックス企画室