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『帯に短し、たすきに長し』 ― 強みを生かす方法を考える―

2010年10月20日

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布切れが帯にするには短すぎ、たすきにするには長すぎることを例えに、この諺ができました。
結局、どちらの目的でも、使用不可能となってしまうことから、「中途半端で役に立たない」場合に使われるようになりました。
同じ意味の諺としては、たすきを回し(相撲で腰に付けるもの)に変えて、「帯に短し、回しに長し」というものもあります。
さらに他の諺では、「褌(ふんどし)には短し、手拭いには長し」、「次郎にも太郎にも足りぬ」というものもあるそうです。
英語では、「Belt too short,suspenders too long」(ベルトでは短すぎ、サスペンダーには長すぎる)と表現されます。
「帯に短し・・・」は、現在では人と人を比べて評価する場合に多く使われているようです。
もちろん物と物、店と店、会社と会社の場合でも使用できます。
今回は、個人としての特徴の出し方、店舗や会社としての特徴づけと差別化について考えてみたいと思います。

《ウシとカエル》

前回取り上げたイソップ物語が好評だったので、今回も続けたいと思います。
カエルの子供達が初めて牛を見て、その巨大さに驚きます。
子ガエルが帰宅し、母ガエルにその巨大さを伝えると、母ガエルは息を思いっきり吸い込み、腹をふくらませて「この位?」と子ガエルに見せます。
子ガエルが「もっと大きかったよ」と言うので、母ガエルはどんどん息を吸い込み大きく腹をふくらませますが、最後には母ガエルはパンクしてしまうという悲惨なお話です。
他のマネをすることの恐ろしさと愚かさを教訓として示している物語ですが、「身の丈に合った行動をしなさい」と教えているようにも思います。
「あの人(店)と同じような立派な人(店)になりたい」・・この様な夢は誰もが持つものです。
しかし、夢が現状とかけ離れ過ぎた場合、身の程を知っていないと身を滅ぼしかねないことをこの話は教えてくれています。
フランスの作家であるラ・フォンテーヌは1668年から1693年にかけて、イソップ寓話や神話を基にして、それらに教訓や風刺を盛り込んだ「人生の教科書」とも呼ばれる寓話集を書いています。
その中で、この「ウシとカエル」についてラ・フォンテーヌは、「このように賢くない人が世の中にはたくさんいる」と結んでいます。
高度成長期やバブル期には、羽振りがいきなり良くなる人達が大勢誕生してきました。
その後もネットバブルや個人投機等によって、成り上がりセレブと呼ばれる人も生まれました。
現在は、中国からツアーを組んで不動産やブランド品を買いに来日する中国人セレブの人達が大勢出てきているそうです。
時流に乗って一攫千金を手にする人もいるのは事実ですが、そういった羽振りの良い方々をマネしてみても、自らの足元をしっかり見ていないと、牛を見て破裂した母ガエルになりかねないと心しておくべきと思います。

《犬と肉》

次のお話は、欲張り過ぎを戒めるお話です。
肉を口に喰えた犬が、橋の上を通りかかります。
下を流れる川を見ると、自分と同じように肉を喰えた犬が、じっとこちらを見ています。
相手の肉も欲しくなった犬は、川面に写る犬をおどかそうと、吠えた途端に自分のくわえていた肉が川の中に落ちてしまうというお話です。
欲張ったばかりに、自分の肉までも失ってしまう教訓話です。
もうひとつ、「ガチョウと黄金の卵」という話もあります。
農夫の飼っているガチョウが毎日一個ずつ黄金の卵を産み、その農夫は金持ちになります。
しかし、そのうちに一日一個の卵が待ち切れなくなり、腹の中の全ての卵を一気に手に入れようとして、ガチョウの腹を開けてしまいます。
ところが、腹の中には金の卵はなく、その上ガチョウまで死なせてしまうというものです。
この話も、欲張り過ぎたが為に、結局は元も子も無くしてしまうことを伝えています。
欲張って一度に大きな効果を得ようとすると、その効果を生み出す資源すらも失ってしまうことがあります。
効果を生み出す資源をしっかり見つめて考慮に入れる事によって、長期的に大きな効果を得ることができるものだという教訓なのだと思います。
私達ビューティビジネスの世界で、金の卵を生む資源は何かと考えみると、継続して来店いただくお客様、長く働いてもらえるスタッフ、繰り返し練習して積み上げてきた技術スキルや接遇サービスなどだと思います。
いずれも一朝一夕には出来ないものばかりであり、これらを金の卵を継続して生み続けられるように、大切にしていかなければならないと思うのです。
決して、簡単に口から肉を離してしまう犬や、ガチョウの腹を切ってしまう飼い主になってはならないと考えます。

《ロバを売りに行く親子》

父と息子が、飼っていたロバを売りに行くため、二人でロバを引いて市場に向けて歩きます。
それを見た人が、「せっかくロバを連れているのに、乗りもせずに歩いているなんてもったいない!」と言ったので、父は息子をロバに乗せます。
別の人がそれを見て、「元気な若者が楽をして親を歩かせるなんて、ひどい!」と言うので、なるほどと思った父は、息子と代わりロバにまたがります。
次に出会った人は、「自分だけ楽をして、子供を歩かせるとは悪い親だ!一緒にロバに乗ればいい。」と言ったので、二人で乗ることにしました。
今度出会った人は、「二人も乗るなんて、重くてロバがかわいそうだ!」と言ったので、こうすれば楽になるだろうと、狩りの獲物を運ぶように、一本の棒にロバの両足をくくりつけ吊り上げ、二人で担いで歩き出します。
ところが、不自然な姿勢を嫌がったロバが急に暴れだし、川に落ちて流されてしまい、結局親子は苦労しただけでロバを失なってしまったというお話です。
人の意見ばかり聞いて、それに左右されて主体性のない行動をとれば、時としてひどい目に遭うという教訓話だと思います。
さて、困った状態になると人は、ワラをもすがるように周囲に助けを求めがちになります。
経営改善をしようと思うと、経営者は多方面に助言を求めるものだと思います。
友人、取引先業者、会計士、コンサルタント会社などです。
しかし、ロバを売りに行った親子のように、さっきはこっち、今度はこっちと、右に左に経営方向がぶれ始めると、余計に悪い方向に行ってしまうことがあることも忘れてはなりません。
経営者としては、自店の強みと弱みを把握した上で、惑わされずに中長期的に改善を計る方向で考えるべきだと思います。

《強みと弱み》

経営の問題を解決しようという場合に、どうしても欠点や弱点を見てしまいがちになります。
「課題の発見」という文脈を見ると、どうしても「=欠点の指摘」という消極的な見方をしてしまうものです。
「課題の発見」=「自分の隠れてしまっている長所を有効に活かすこと」という積極的な考えが後回しになりがちになってしまいます。
課題を発見しようと思うと、「お客様との関係性を見つめ、お客様に選ばれる理由を強化しよう」という根幹の方向にいかず、上下の意思疎通などの、いわば「内向きな課題」に目を奪われてしまいがちになります。
つまり、考えなければならない優先順位が狂ってしまうということです。
激しい競争の中で、それなりの売上げを実現しているということは、お客様に選ばれるだけの長所があるということです。
その長所を伸ばす方向で考えることも必要なのですが、逆に短所の矯正の方に目が行きがちなのが経営者でもあるのです。
埋もれてしまっている長所を活かすことが一番必要なことなのに、組織でも個人でもそこに気がついていないと思うのです。
弱点を直しながら新しく劇的な変化を導入して、大きく変わりたいと、我々の様な小さな集団はついつい考えがちです。
しかし、これで弱点が補われて、新しい武器を使いその分野で先行する競合者に仮に追いつけたとしても、長所を伸ばすことができていなければ、単に特徴のない平均化をしただけになってしまうような気がします。
日本では長い間、長所を伸ばすことよりも弱点を補うことによって、結果として平準化をして、必要最低限のことを確実に行なえるように指導する教育をしてきたように小生には見えます。
経営では平準化、平均化は自分の特徴を封じてしまう自殺行為になると感じています。
欠点を補っても、長所を殺してしまっては、お客様から見て特徴が見えなくなり、差別化できずに埋没すると思うのです。
私達の業界は、中小冷細規模の事業者が多い業界です。
特徴が消えると、自分より人数も資本力も大きな事業体と対抗する場合には、非常に不利と言わざるを得ないと思うのです。
大企業にはない立派な長所があるのに、経営者もスタッフもそれに気が付かないこと、それが我々中小冷細規模の事業者が抱える最大の課題のような気がするのです。
魅力がないからではなく、魅力を発見する力が足りないのだとしたら、実にもったいないことです。
特に他者からの助言を鵜飲みにし過ぎると、短所を補うことばかりに目がいきがちになるので注意が必要です。
カエルが牛のマネをすることは、決して得策とは思えません。
他者の持っている肉(=長所)を意識し過ぎて、自らの長所(=肉)まで無くす犬のようになってはいけないと思います。
自店の価値(=金の卵)を生みだす、ガチョウ(=経営方針)を大切にし、ロバを連れた親子の様にぶれないことが大切です。
個人の能力についても同様で、長所をいかに伸ばして個性的な魅力を最大限に引き出していくかが、お店の強みにつながっていくのではないでしょうか。
「帯に短し、たすきに長し」といった、特徴を殺してしまった中途半端な経営にしてしまうのではなく、他店との違いを明確にし、強みを活かし特徴を出す経営こそが、小規模事業者の生きる道ではないかと思いますが、いかがでしょうか。

今回は、株式会社ワイキューブの取締役クリエイティブディレクター・伊藤英紀氏のメルマガ「ビジネスコラム・Y‐LETTER」を参考にしました。