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『夜明け前が一番暗い』 ― 元気をみなぎらせるためのヒントを考える―

2010年09月20日

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「つらいことの後には必ずいいことがあるものだ」という英語の慣用句「The darkest hour is always just before the down.」(いつも夜明け前の時間が最も暗いものだ)を日本語に直訳して諺となったものだそうです。
「down」は日没のように思えますが、「夜明け」です。
「daybreak」も日昼が壊れてしまうような表現ですが「夜明け」と訳されるのは、西洋文化と日本文化の表現方法の違いを感じさせます。
(休憩・一息のbreakだとすると、太陽のお休み時間の意味かも知れませんね?)
何をやってもうまくいかない状態に置かれた時、絶望感に打ちひしがれて、気力を失ってしまいがちなのが人間です。
しかし、自分独りではどうやっても変化させることのできない外的環境を嘆いたり、恐れたりしていても局面を打開できるものではないと思います。
「不景気だ」「円高だ」「株安だ」「猛暑だ」と、「セイだ病」(○○のせいだ)、「ムリだ病」(××だから無理)に陥れば、ますます事態は悪化するものです。
「今が底」、「明けない夜は無い」と気持ちを強く持って乗り切るべきだと思います。

《北風と太陽》

例年にない程、猛暑日が各地で連続した夏でした。
三重県桑名市で38℃を超えた日は、エジプトと並んで世界一の気温だったそうです。
三重県が赤道直下の地域やハワイより気温が上だったのです。
猛暑の連続で日本が熱帯化して、一年中夏になってしまうのかとすら錯覚しそうでした。
しか~しです。
そんなことは決してないのです。
十一月、十二月になれば必ず冬は来るのです。
暑い日が続けば、やがては寒い日もやってきて、寒い日が続けば、やがては暑い日もやってくる、これが自然の法則なのです。
事業経営もこれと同じことだと思います。
寒い日が続いて、凍え死んでしまいそうだと思っても、やがては暑い日が来ると信じて、厚着をしたり、火に身を寄せたり、温かいお茶を体に入れながら、薄着になって大暴れできる日に備えて準備をしておくのが経営の在り方だと思うのです。
逆に経営が順調な時(暑い日)が続いていた場合に、永遠に暑い日は続かず、寒い日が必ずやってくることも心に刻んでおきたいとも思います。
今、大ヒット中の商品の販売が一巡して、売上減となった場合を想定して手を打ってあるか、競合店が出現すること、中心スタッフが病気で倒れたり、退職する場合のことなどを、想定できているかということなのです。
イソップ物語の「北風と太陽」は、北風がビュービューと勢い良く旅人に吹きつけても、旅人は用心してコートをしっかりと押さえるので、飛ばせないといった内容のお話です。
風の強い日ばかりではなく、寒い日も、人は用心するものです。
太陽がポカポカの陽射しを送ると旅人はあっさりとコートを脱ぎ、力づくよりも寛大な対応の方が、人は心を開き易いという教訓を示した物語です。
しかし、逆説的に考えれば、温かさや優しさで心の安心感を持った時にこそ、人は無防備になり易く、厳しい北風や酷寒の環境下におかれると、人は用心深くなると言い換えることもできるのではないかと感じます。
清少納言「枕草子」、鴨長明「方丈記」と合わせ日本三大随筆のひとつと評価される吉田兼好の「徒然草」の中に、「木登りの名人」という話が載っています。
木登り名人が、人を指図して高い木に登らせた時、危険そうなところでは何も言わずに、もう大丈夫と思われるところまで下りて来た時点で、「用心しろよ」と声を掛けたという話です。
経営者は、経営が順調な時こそ備えを忘れずにいたいものです。
そして、接客のプロのスタッフとしては、お客様と慣れ親しんで来た時ほど、気を緩めずに、慎重に言葉や礼儀を考える必要があると思うのです。

《アリとキリギリス》

暑い日は永遠に続かず、寒い日が必ずやってくると認識できれば、その寒い日を生き延びる為に、暑い内に、まだ見ぬ寒い日に備えて準備を怠らないぞという発想に切り替えられます。
イソップの寓話では、アリが準備を怠らず働き続け、キリギリスは歌を唄って働かず、冬の備えをしなかった為に餓死します。
イソップ寓話は、紀元前6世紀に奴隷のアイソーポスがそれ以前伝えられてきた民話をまとめ始め、それがギリシャ語の原典となり、後にラテン語、フランス語、英語と翻訳されながら、物語の数が増えていったといわれています。
日本には、戦国時代後期の1593年(文禄二年)にイエズス会宣教師によって伝えられ、江戸時代初期から「伊曾保物語」として出版され、普及していったとのことです。
「アリとキリギリス」はギリシャ語やラテン語の段階では、「アリとセミ」や「アリとセンチコガネムシ」だったそうですが、アルプス以北に伝わる過程で、ヨーロッパ北部にはセミがおらず馴染みが無かった為に、キリギリスに変わったとのことです。
日本には北ヨーロッパのものが伝わった為に、キリギリスが一般的となったようです。
セミさんの名誉の為に弁護すると、セミは地上では長くても一カ月、短ければ一週間足らずで死んでしまいますが、地中では3年から種類によっては17年も、日の目を見る日の為に黙々と頑張っているとの事です。
ビューティービジネスに従事する皆さんにとって、技術とは、コツコツと積上げて蓄積し、身につけていくものだと思います。
一日の研修に参加しただけで飛躍的に向上できるものではなく、毎日の練習の繰返しが長い月日とともに大きな差となって表れてくる種のものだと思うのです。
業界では、競技大会真っ盛りの時期ですが、ここで出る結果は、アリの様な毎日のトレーニングの成果ではないかと思います。
サロン経営者の皆さんは、店舗の経営資源をどうやってコツコツと蓄え、寒くなっても安定した運営ができるように、経営勉強を積み重ねるのが課題だと思うのです。

《ウサギと亀》

イソップの寓話とは知らず、日本の昔話と思い込んでいる人も多いのが「うさぎとカメ」です。
石原和三郎の作った童謡「もしもし亀よ亀さんよ・・・」を子供のころから聞かされているからかも知れません。
亀に負けたウサギは恥をさらしたとのことで兎仲間から追われますが、ウサギ集団を狙う狼を知恵を絞って撃退し、名誉回復してウサギ社会のヒーロー(ヒロイン?)になったという続編の載っているイソップの原典もあるそうです。
いずれにしても、この話の中で、亀の一番偉いところは、目標を持って信じたことを継続し続けて、差を付けられても決して諦めなかったことだと思います。
セブンイレブンジャパンの創始者で、現セブン&アイ・ホールディングCEOの鈴木敏文氏は、「人には革新的な面と保守的な面とがあり、自分の問題になると保守的になりがちだ」と主張しています。
「売れる店はますます売れるようになるのに、売れない店はますます売れなくなるのは、売り手の保守的な心理が原因」と説明します。
商品が棚に10個以上並んでいる場合と2~3個しか置かれていない場合では、10個以上並んでいる方が単品としての表現力があり、お客様にとっては「選ぶ理由」となって買ってみようという心理が働くそうです。
逆に2~3個しか置いていないと、その商品を認知してもらうことが出来ずに、「売れ残り」とお客様が感じ、「選ばない理由」にまでなってしまう場合があると鈴木氏は言います。
実際に、大量陳列をした方が販売量も増え、売れ残りの廃棄ロスも減るという明らかな結果も出ているそうです。
廃棄ロスを恐れて消極的な仕入れを行い、少数ディスプレイをした場合のほうが、結局は売れないまま損失になる確率が高くなるのだそうです。
その商品があれば売れたのに、無かったことで生じる損失を「機会ロス」と呼ぶそうですが、多めに仕入れて陳列した方が機会ロスが減り、少なめの発注量で廃棄ロスのリスクを回避しようとの心理が働くと、かえって機会ロスと廃棄ロス両方の損失を招いてしまうそうです。
不景気になると、店側がこうした消極的心理に陥りがちになり、どんどん商いが縮小してしまうと鈴木氏は指摘しています。
廃棄ロスは目に付き易く、どのくらい損をしたか数字にもすぐ表れるが、機会ロスは目に見えず、数字にはすぐ出てきません。
人間は、目に見えない、得られるはずの大きな利益よりも、目に見える損失のほうを、大きく感じてしまいがちなのです。
そして、保守的な心理に経営者が陥ってしまうと、「その商品があれば売れたはず」(=機会ロス)という発想そのものが出来なくなってしまいます。
そして、「うちの店ではこういう品は売れない」と間違った思い込みをしてしまいます。
物事を判断する時、多くの場合に直感的に答えを導き出しますが、この様な直感は、過去の経験に影響されることが多い為、お客様の現在の本当の姿を見失った判断をしてしまいがちです。
保守的な心理に経営者が陥ると、目に見えない明日の顧客ではなく、目に見える今の来店客のみに目が向いてしまいます。
そして、今売れている商品に目が向き過ぎて新しい商品の品揃えに消極的になってしまいます。
すると、お客様は「この店は新しい商品も少なくて品揃えも悪い」と判断し、離れていきます。
販売者側も、「この商品は廃棄ロスになったから、うちの店ではニーズが無い」と思って更に消極的になりがちになります。
深い心理の問題の為、店側が気付き難く、自分の判断が本当の顧客ニーズとズレているのに、自分は間違っていないと思い込んでしまう結果となります。
亀は過去ウサギに一回も勝っていなくても、今度は勝てると積極的に勝負を挑み、消極的に諦めることをしなかったからこそ勝てたのだと思うのです。
さらにもっと大切なことは、ウサギは相手の亀を見て競争してしまったが、亀は相手のウサギを見るのではなく、ただただ目標であるゴールを目指していたという事実なのかも知れません。

《叶うと吐く》

亀の様に黙々と独りで目標に向かって歩み続けられれば素晴らしいのですが、人はなかなかそれができないものです。
やはり、アリさん達のようにお互いに言葉をかけて励まし合っていかなければ、目標達成は難しいものだと思います。
夢が叶うの「叶う」(かなう)は口に十と書きます。
最低10回目標を口にして人に聞いてもらい、それを最低10人に語ると良いと思います。
そうすると10回×10人で、最低でも100回は他の人に対して発することになります。
10回も口にすると、自分でも引っ込みがつかなくなり、必ず実現しないと恥ずかしいと思うようになり、100回も口にすると、できるに違いないと思えてくるので不思議なものです。
そこまで人に目標を発していると、応援しなきゃと思ってくれる人達が周囲に次々と現れて、ますます達成しやすい環境が整っていくものです。
プラスの連鎖が生まれたのです。
「叶う」は口にプラスとも読むことができます。
積極的、ポジティブ、プラスの言葉を目標にして、口から発していると「叶う」確率が上がってくると思うのです。
逆に、消極的、ネガティブ、マイナスの言葉を吐き続けると、夢が叶う確率を減らしてしまうのではないでしょうか。
「弱音を吐く」、「暴言を吐く」などと使いますが、「吐く」は良い言葉を発する時には使わない単語です。
「吐く」は口に+(プラス)と-(マイナス)と書きます。
マイナス言葉をやめて、-(マイナス)を文字から取り除くと、「叶う」という文字に変化します。
「武士の弱気は馬に伝わる」と言われるように、マイナス感情は周囲に伝わり連鎖しがちです。
先輩の発するマイナス感情は、後輩に伝わり、経営者が発すれば社員に伝わるものなのです。
店内で発せられた消極的感情は、お客様にも楽しくない感情として伝わってしまうものです。
逆に、明るい希望が充満した店内は、お客様にまた来たいと思わせるプラスの雰囲気をつくり出すに違いありません。
逆境に置かれた時も、「必ず夜は明ける」「必ず夏は来る」と積極的に気持ちを切替える事が、全ての解決策につながる第一歩と考えますが、いかがでしょうか。
今回は、モチベーション・アップ㈱の代表取締役社長・桑島克憲氏のメルマガ、フリージャーナリスト・勝見明氏著「鈴木敏文の話し下手でも成功できる」(プレジデント社刊)、㈱ジェイック・轡恵里氏のFAXレポート「くつわ通信」を参考にしました。