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『鹿を逐(お)う者は山を見ず』 ― ドラッカーとコヴィーの共通点 ―

2011年07月20日

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この諺は中国の古典・虚堂録からでたものだそうです。
山で鹿を追いかけるのに夢中になっている猟師には、山全体の様子が目に入らないものです。
そして、目の前の利益を得ようと夢中になっていると、目先のことしか分からなくなり、大きな利益につながる全体の様子を見失ってしまうというたとえで使われるようになりました。
さらに転じて、「あるひとつのことに夢中になっていると、他のことを顧みる余裕がなく、周囲の情勢や事の道理を理解することができない」と広い意味で使われるようになりました。
英語では、『Zeal is a bad servant』(熱中は悪い召し使いである)と使われるそうです。
余談ですが、召し使い=servant、奴隷=slave、などのラテン語の語源はサービス(奉仕する)と同じだそうです。
例えば、製造業のモノづくりのプロは、自分が満足できる良い製品をつくることに集中し過ぎてしまうと、使う側の利便性が見えなくなってしまい、市場に合致しずらい独りよがりな品を作ってしまう場合があります。
商事会社であれば、営業実績や売上数値にばかり目がいってしまうと、買い手であるお客様の満足度が見えなくなり、ピントはずれの商品をお勧めしていくことにもなりかねません。
ビューティクリエイターの場合はどうでしょうか。
お客様をいかに美しくするかに集中することは良いことだと思いますが、それを作るためのステップである、例えば切ることなどの技術ステップばかりに集中し過ぎると、お客様の気持ちを考えて寄り添って上げることが足りなくなる場合も出てきてしまうのではないでしょうか。
今回は、今一番注目を浴びている二人、近代経営学の父と呼ばれるピーター・F・ドラッカー博士と、世界のベストセラー「7つの習慣」の著者であるスティーブン・R・コヴィー博士の考え方の共通点を探ることから、今の店舗経営に必要な成功原則を考えてみたいと思います。

《パラダイム》

アメリカの科学史家トーマス・クーンが1962年に自身の著作の中で使用したのが始まりの単語が「パラダイム」です。
クーンは「パラダイム」とは、「広く人々に受け入れられている業績で、一定の期間、科学者に、自然に対する問い方と答え方のモデルを与えるもの」と説明しています。
例えば、天動説が一般的に信じられていた時代にコペルニクスが地動説を唱えたり、ニュートンが万有引力の法則を世に送りだしたり、ダーウィンの進化論やアインシュタインの相対性理論など、今まで長期間常識とされていた学説や理論、規範、範例などを打ち破って、真逆の考え方に劇的に変化することを「パラダイム転(変)換」、「パラダイムシフト」などと表現されるようになりました。
クーンは科学史という専門領域で信じられてきた常識を「パラダイム」という言葉を使い表現しましたが、次第に他の分野に拡大し、一般的な単語として使用されるようになってきました。
著書「七つの習慣」でコヴィー博士は、このパラダイムの考え方を使い説明しています。
人は無意識のうちに、自分の経験をもとにあらゆる事実を解釈し、理解しているのです。
すべての人は、ものごとをあるがままに見ているのではなく、実は人それぞれ一種の色メガネや、レンズ、フィルター、地図の様なモノを通して見ています。
この色メガネ等の個人の見方をつくるものこそが、一人ひとりの経験や価値観に基づくパラダイムであり、私たちの現実をつくり出し、私たちの行動を方向づけているのだとコヴィー博士は説明します。
心理学用語で、頻繁に使われる「投影」という考え方も、人それぞれのフィルターを通して、無意識の内に、人の感情が動いていることをいったものです。
コヴィー博士は、我々は自分のパラダイムが正しいかどうかを疑うことは滅多になく、パラダイムをもっていることすら意識することは稀だと語っています。
「お客様の立場で」とか、「部下の視点で」といった言葉などがよく使われますが、これらは相手のパラダイムを理解するということに他なりません。
そのために必要なことは、相手の話を真剣に聴き、理解しようと努力することです。
しかし、この様な決して難しくなさそうなことが、実はなかなかできていないものです。
それは、判断する側(=特に自分)が、自分の色メガネで判断してしまっていることを忘れてしまうからです。
「私とあなたは違う現実を見ている」というパラダイムを前提にした考え方こそ、相手を理解しようとする姿勢を生みだし、周囲との信頼関係を築いてくれるものなのです。

《パラドックス》

パラダイムは過去通用していた浴説のことを指しますが、パラドックスは、「一見矛盾しているようだが真理を含む説」や「逆説」という意味をいいます。
「逆もまた真なり」といいますが、一見真理ではないことを述べているようでも、よく考えると真理を述べているということはよくある話です。
また、正しいことはひとつではないということもあります。
正しい正しくない、良い悪いにこだわりすぎてしまうと本当の真理が見えなくなり、判断を間違えてしまうことがあります。
前述のとおり、全ての人が自分のフィルターを通してすべてを判断してくる以上、どの見方が正しくて、どの見方が正しくないのかを即座に決めつけていくのは非常に危険なことです。
なぜなら、そのように判断する自分自身も、無意識のうちに自分の色メガネを通して判断しているからです。
マーケティングの根底にある重要な部分は、対象者の心の奥底に眠る思いを、いかに引っ張り出し聞いていくかという点です。
対象者自身も気が付かない、見えていない潜在的ニーズを引き出して聞き取っていくものです。
当然、通り一辺倒のアンケートなどでは引き出せない領域です。
ドラッカー博士は、ゼネラルモータース(GM)を世界最大級の自動車メーカーに導いたリーダーのアルフレッド・スローン氏の逸話を書いています。
スローン氏は「この決定に関しては、意見が完全に一致していると了解してよろしいか?」と聞き、出席者全員がそれにうなずいた場合は、「他の異なる見解を出して、もっと理解するための時間が必要なので、さらに検討したい」と言った逸話です。
これは、スローン氏は、反対意見を大切にしており、安易に意見が一致する場合は逆に問題があると判断した逸話なのです。
ドラッカーだけでなく、コヴィー博士も「2人の人が同じ意見を持っているとすれば、そのうちひとりは余分である」と、異論を歓迎する姿勢にたちました。
つまり、自分独自のレンズを通して、あらゆる現実を自分なりに解釈しがちなものなのです。
また、同じ立場の人間でも経験が違えば、事実の捉え方は異なり、ましてや役割が違えば、同じ現象でも違う現実を見ているのは当たり前のことなのです。
相手を理解しようとする文化が根づいている組織では、異論を歓迎します。
相手が自分と違う意見をもっているということは、相手は自分と違う現実を見て、違う問題に気付いているということです。
だからこそ、異なる意見のぶつかり合いが、私達自らの想像力を刺激して、より優れたアイデアと決定を生みだしてくれるという考え方に立つのです。
異なる意見があるからこそ、1プラス1が3にも4になる、だから組織で仕事をする意味があると考えるのです。
来店される消費者さんも千差万別な各々のフィルターを通して見ている以上、サロンに求めるものも違ってきます。
それを安易にひとつの考えだと勘違いして、多数意見をまとめたようなサービス内容や、メニュー、接客応対にしてしまうことは、本当に顧客の声をひろい出せていない場合は怖いことなのかも知れません。

《パラダイス》

パラダイスは天国、極楽、楽園を意味する単語です。
聖書で、エデンの園をパラダイスと呼んだことから、天国のヘブンと使い分けられています。
お客様にとってのパラダイスが、「美しく変身できる」、「美しく変わっていく過程を楽しむ」、「安らぎの時間を楽しめる」、ことなどと仮に想定します。
それでは、美容技術者がお客様と接客する際のパラダイスとはどの様なものなのでしょうか。
「お客様の容姿が劇的に変わったことで満足する」、「思った通りの技術ができた」、「お客様が喜んだり満足した顔が見えた」、いずれもこれだけでは働く者にとってはパラダイスとしてはもの足りないと思われます。
コヴィー博士は、「あなたが死んだときのことを想像して下さい。葬儀に参列するあなたを良く知る人たちに、あなたの人生についてどう言って欲しいだろうか?あなたはどんな人だったと声をかけて欲しいだろうか?」と著作「7つの質問」の中で投げかけています。
マネジメントの父・ドラッカー博士も、「あなたは何によって憶(おぼ)えられたいか?」とあらゆる人達に質問し続けています。
いずれも人生のミッション(使命)を考えるための質問です。
個人としてどうありたいのか、何をしたいのか、自身に問いかけることが重要で、それを所属組織の中で生かし、使命に向かって着実に歩んでいる、成長しているという実感が必要だと彼は語っているのです。
自己実現に向かっているという実感が、働く側の「パラダイス」ではないかとの指摘です。
ドラッカー博士は、組織の目的は、「人のエネルギーの解放と動員」であると主張し、組織における最も重要な目的が「使命(ミッション)」だと表現します。
そして、「何をどうやるのか?(what)」という目標・方法に囚われがちな我々に、「なぜ?何のために?(why)」こそが最も組織にとっても個人にとっても重要なことだと語ります。

《サンタクロースの使命》

ミッションのあるサンタクロースと、ミッションのないサンタクロースの違いのお話です。
ミッションのあるサンタクロース達は、自分達のミッションを「子供達に夢を与えること」と定義しています。
サンタはクリスマスイブに、子供達にプレゼントを届けなければなりません。
年によっては、寒波が襲う冬もあれば、吹雪もあるでしょう。
そんな日の深夜にプレゼントを届けて回るのは大変な仕事です。
ミッションのないサンタにとっては、この仕事は日々の糧を得るためなので、「こんな寒い日に配達するなら、寒冷手当でももらわなきゃやってられないよ」とか、「今夜は吹雪いているから、明日の午前中に配送すればいいんじゃないか」と感じます。
しかし、ミッションを大事にし、「子供達に夢を届けたい」と思っているサンタは違います。
「今日は吹雪いているから、早めに出て、夜が明ける前にプレゼントを届けられるようにしよう」とか、「包装紙が濡れないように注意しよう」と考えます。
ミッションがあるかないかは、「仕事の後」にも違いが出ます。
プレゼントを届けた後のミッションのあるサンタ達は、「子供達は喜んでくれただろうか?」、「来年はもっと多くの子供達に喜んでもらえるよう、早めの準備しなくちゃね」といった会話を交わしています。
一方ミッションのないサンタ達は、「今年はとんでもない天気だったな。疲れたよ。」、「いや、一晩に一人100軒が限界だよね。来年は今年以上に配りたいなんて、上は無茶ばかり言うんだから」と愚痴を飛ばし合っているかも知れませ ん。
もうひとつ、「アフリカに市場調査に行った靴のセールスマン」という有名な逸話をご存知でしょうか。
靴屋の社長が、市場調査のために二人の営業マンをアフリカへ出張させます。
帰国後、市場の可能性を報告させると、一人は、「社長、アフリカ進行は無理です。誰も靴なんて履いていません。売れるわけがありません。」と報告しました。
社長はがっかりしつつ、もう一人の営業マンを呼んだところ、彼は目を輝かせ、「社長、今すぐアフリカへ進行すべきです。あの土地では、まだ誰も靴を履いていないのです。無限のマーケットが広がっています!」と興奮気味に話したという逸話です。
同じように、エスキモーに冷蔵庫を売りに行く話もあります。
一見するとこれらの話は、人それぞれに自分のフィルターでものごとを判断しているといった前述のコミュニケーションギャップの話にも見えますが、仕事に対しての使命感(ミッション)の違いで、モノの見方が変わる話ではないかとも思うのです。
「鹿を追って山を見ない」のではなく、コミュニケーションの受け手であるスタッフとお互いのモノの見方を確認し合った上で、お客様のモノの見方をしっかりと見極めることこそが、サービス業である業種に一番必要なことと感じますが、いかがでしょうか。
㈱ジェイック・常務取締役・知見寺直樹氏著「『7つの習慣』と『ドラッカー理論』が口をそろえて教えてくれた7つの大切なこと~理想の組織をつくるための成功法則~」を引用しました。
その出典著作は次の通りです。
『7つの習慣R』 著:スティーブン・R・コヴィー 訳:ジェームズ・J・スキナー/川西茂 発行:キング・ベアー出版 『経営者の条件』『現代の経営(上)』『マネジメント基本と原則』『非営利組織の経営』いずれも著:ピーター・F・ドラッカー 訳:上田惇生 発行:ダイヤモンド社