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M-press『落ち武者は薄(すすき)の穂にも怖(お)ず』 ― 取り巻く環境変化に対する対応法の考察 ―

2013年11月01日

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怖い、怖いと思っていると、なんでもないものまで恐れてびくびくしてしまうというたとえで使われることわざです。

戦いに負けて逃げ落ちる武士は、すすきの穂が揺れるのを見ても敵だと思い、おびえてしまうことからできたようです。

似た意味のことわざでは、『杯中(はいちゅう)の蛇影(だえい)』

というのもあります。

中国の古典『晋書』にある、杯に映った影を蛇の影だと思い込み、その杯の酒を飲んでしまったことを気にして病気になってしまった友人に、『それは壁にかけてあった弓の影だ』と教えたら、たちまち病気が治ったという故事から出たことわざです。

疑うと、なんでもないことにもおびえて気に病むようになることの例えで使われます。

また、『幽霊の正体見たり枯れ尾花』という江戸時代の川柳から出たことわざもあります。

横井也有(やゆう)という人の句で、『化け物の正体見たり枯れ尾花』とも表現されるようです。

『枯れ尾花』は枯れたススキの穂を意味し、幽霊と思い込んだものを良く見たら、なんと枯れ尾花だったことを詠んだ句です。

どうやら人間は、怖い怖いと思っていると、なんでもないものまで恐ろしいもののように見えてしまう生き物のようです。

英語の慣用句でも似た意味のものがあります。

『One always proclaims the wolf bigger than himself.』(狼を見た人はいつも大きく報告する)と表現するようです。

用心深くあらゆる変化を想定して、慎重に、用意周到に準備していくことは非常に大切なことだと思っています。

しかし、恐れてしまいすぎると、些細なことにまでびくびくしてしまい、まったく身動きが取れない状態になります。

恐れることよりも、今打てる手立てを着々と打って、備えることのほうが重要な筈です。

そんな、手立てを考えてみたいと思います。

《疑心、暗鬼を生ず》

十月のスタートと同時に、安倍首相から、来年4月より消費税率を3%引き上げ8パーセントにするとの発表がありました。

規定の路線だったとはいえ、この発表には失望感を感じた方も多かったのではないかと推察しています。

景気浮揚しているとの数字を並べられての報道に対しては、『本当かよ?』って実感を持つ人が多いようにも思われますし、『景気がいいのは、円安差益で潤う輸出が多い企業や、資産を持つ大企業や不動産投資余力のある資産家の人だけだろう?』という疑問符の付く見方もあるようにも思います。

さらに、『オリンピックの東京招致に成功し、投資マインドが活発化してきたのを見計って、この時期に発表した出来レース?』という、うがった見方をする人もいらっしゃるのではないかとも想像できます。

『疑心、暗鬼を生ず』とは、疑いの心があると、暗闇の中にいるはずのない鬼の姿を自分自ら見出してしまうということです。

中国の古典・烈子に乗っている逸話から出たことわざとのこと。

疑ってかかると、別に何でもないことまで疑わしく思えたり、恐ろしく感じたりしてしまうということに陥ってしまいます。

消費税率を上げる政策を支持する立場ではありませんが、税率アップにともなう起こりうる時勢変化や、消費者マインド低下を必要以上に心配しすぎたり、恐れすぎてしまうよりも、冷静に眺めて手を打つべきことがあるように思うのです。

消費税の問題を例に挙げましたが、美容学校の生徒減少や美容室就労人員確保の難しさ、競合他店・競合他社との競争激化、社会保険など労働環境の整備など対応課題はたくさんあるのかと思われます。

『疑心、暗鬼を生ず』とは、英語では、『Fight with one`s own shadow』(自分自らの影と戦う)と表現されるとのことです。

つまり、表面に出てきている問題点は、自分の置かれている問題点の一部が形を変えて出てきていることだともいえるのです。

自店、自社の経営の質を上げるための問題点であり、それを気づかせるために、天が与えてくれた課題であると捉えて、改善にあたるように小生は自らに言い聞かせるようにしています。

《杞憂(きゆう)》

「杞人の憂(ゆう)」、「杞人の憂(うれ)え」ともいいます。

あれこれと無用の心配をすることや取り越し苦労の意味です。

中国の杞の国の人が、天地が崩れ落ちたらどうしようとしきりに憂えたという、『烈子・天瑞』の故事に基づくことわざです。

天が落ちてくるといえば、ノストラダムスの大予言という本が以前大ヒットし、西暦2000年になる前に恐怖の大王が天から降ってきて人類が滅亡するかも知れない…なんて話もまことしやかに囁かれていました。

心配しなくていいことまで必要以上に心配しすぎると、ものごとの本質まで見えなくしてしまう気がします。

本質とは、シンプルに考えてみると、お客様の満足度合いの評価としての対価が技術料金であったり、商品販売高だったりといった実績だということです。

消費税率アップ対策と言う前に、お客様に満足いただいて、納得していただいて代金支払いをしていただける技術提供内容や、心の満足内容かどうかということの見直しが大切では無いかと思うのです。

税率アップ金額をどうやってお客様に納得、理解していただいて、今までの価格に上乗せ転嫁していただくのかを悩むよりも、それ以前にお客様が満足してお支払いいただいている、見合った対価としての料金設定になっているのか、サービス内容と満足度を検証してみる必要があるのではないのかと考えるのです。

絶対的な若手技術者の不足や美容学生の不足という状況は、間違いない現状ではありますが、人手の需給バランスの問題で悩むよりも、働きやすい環境整備や仲間に入って働きたいと望まれるお店作り、会社作りを目指さなければ道は開けません。

一度結婚や出産で家庭に入ったり異業種へ転職されたりした美容免許取得者の皆様が、再度美容のお仕事に戻っていただけるような、労働環境整備やお店の魅力化なども必要だと思います。

美容学校に入学されない高校生の皆様を支援して、働きながら美容の勉強を通信教育でしていく応援をする方法に舵を取る覚悟も必要なのかも知れません。

打てるべき手はたくさんあるのに、過去のやり方にこだわってしまうやり方をついついとってしまうのも、人間の悲しい癖なのだと思います。

それを払拭しなければ、先に進むことができないばかりか、生き残ることが難しい局面だと認識しておきたいところです。

《武士の弱気は馬に伝わる》

昔の戦は馬で勝負が決まっていたそうです。

しかし、強い馬を持った方が必ずしも勝てるのではありません。

馬は、乗っている人間の気持ちを、敏感に感じ取るそうです。

乗っている人間が、弱気になると、馬も弱気になって戦いに負けてしまいます。

つまりは、馬に乗っている人の問題なのです。

上司の弱気は部下に伝わり、先輩の弱気は後輩に、親の弱気は、子供に伝わります。

恐ろしいことに、サービス提供者側の弱気は、それを受けるお客様に確実に伝わるそうです。

自分の弱気は必ず仲間に伝わってしまうものなのです。

仲間が弱気になっているのでなく、自分が弱気になっているということなのです。

以前もご紹介しましたが、セブンイレブンジャパンの創始者で、現セブン&アイ・ホールディングCEOの鈴木敏文氏は、「人には革新的な面と保守的な面とがあり、自分の問題になると保守的になりがちだ」とかねてより主張しています。
「売れる店はますます売れるようになるのに、売れない店はますます売れなくなるのは、売り手の保守的な心理が原因」と説明します。
商品が棚に10個以上並んでいる場合と2~3個しか置かれていない場合では、10個以上並んでいる方が単品としての表現力があり、お客様にとっては「選ぶ理由」となって買ってみようという心理が働くそうです。
逆に2~3個しか置いていないと、その商品を認知してもらうことが出来ずに、「売れ残り」とお客様が感じ、「選ばない理由」にまでなってしまう場合があると鈴木氏は言います。
実際に、大量陳列をした方が販売量も増え、売れ残りの廃棄ロスも減るという明らかな結果も出ているそうです。
廃棄ロスを恐れて消極的な仕入れを行い、少数ディスプレイをした場合のほうが、結局は売れないまま損失になる確率が高くなるのだそうです。
その商品があれば売れたのに、無かったことで生じる損失を「機会ロス」と呼ぶそうですが、多めに仕入れて陳列した方が機会ロスは減り、少なめの発注量で廃棄ロスのリスクを回避しようとの心理が働くと、かえって機会ロスと廃棄ロス両方の損失を招いてしまうそうです。
不景気になると、店側がこうした消極的心理に陥りがちになり、どんどん商いが縮小してしまうと鈴木氏は指摘しています。

武士の弱気の逸話と鈴木氏の話で、何をお伝えしたいのかと申しますと、前述の『Fight with one`s own shadow』(自分自らの影と戦う)必要があるということです。

景気の問題でも、社会環境の問題でも、業界の問題でも、社員さんやスタッフさんの問題でもなく、当然のことながらお客様起因の問題でもありません。

自らの提供するサービスが、お客様に価値として評価を受けて、その対価として支払われる金額とのバランスが取れており、お客様がお金を払う際に、満足と納得をされているか否かの問題なのです。

いくら安い料金設定をしても高いといわれる満足度かもしれませんし、逆にいくら高く料金設定をしても満足度が高ければ、料金は安いと判断されるものだと思うのです。

自己の店舗とスタッフの皆様が自信のなさをいかに払拭して、自分たちにいかに自信を持てるかの確信を得ることが重要です。

そのためには、何度も足を運んでいただいているお客様に、自店の好きなところ、満足しているところ、お気に入りなどを聴き強みを活かすことで、一人一人の個の存在価値と魅力を高めて店舗としての総合力を上げていき、自己の弱みを怖がりすぎて臆病にならない事が肝要かと思いますが、いかがでしょうか

ビューティ-クリエータ-のための情報誌No.201      マックス企画室 

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