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『痒(かゆ)い所に手が届く』 ― サービスの基本を見直そう ―

2010年02月20日

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細かい所にまでよく気がついて、世話が行き届くたとえで使われる諺です。
すみずみまで心配りができていて、手落ちがなく、至れり尽くせりであることを表現しています。
なかなか達することのできない領域のことなので、そこまでいくと「有るのが難しい」=「有難い」こととなって、それを受けた相手が「有難うございます」と言ったことから、「ありがとう」が感謝の言葉の表現として使われだします。
英語では「to cross thet t’s and the i’s」(tの文字を書く時に横棒を入れてくれたり、iの文字を書こうと思ったら上の点まで書いてくれるような)と表現する様です。
前号の本欄で笑顔がいかに大切で、笑顔が商売の基本であり、笑顔によって事業は好転するものだとの主旨の内容を書きました。
お読みいただいた皆様から多くの反響をいただきました。
少数ではありますが、笑顔を心がけて、そのトレーニングを全員でしただけで店販品の購入確率が上がったとか、店内が活気づいてお客様の笑顔も増えたり、お客様同士の会話が多くなり明るい店になったなどの即効的な良い変化も耳にしました。
逆のご意見で、笑顔が万能だといっても、それだけですべてが好転するわけでもないと思うとの声も伺いました。
また、前々号の本欄の警戒心を取り除き、親密感を深めるための挨拶も併せて、スタッフに意識づけをされたサロンオーナーから、笑顔と挨拶だけでは足りないのではないかとのご意見も頂きました。
そこで今回はサービス業のもうひとつの基本である感謝について考えてみたいと思います。

《孫の手》

痒いところに手が届くといえば思い出すのが、背中などの手が届かない所を掻くための道具としてポピュラーな「孫の手」です。
棒の先を指の形に細工しています。
その手が小さくて、まるで孫の手の様だから「孫の手」なのか、或いは孫のように愛情を持って痒みを癒してくれるから「孫の手」なのかと思っていたらどうやら語源は違うようです。
中国に麻姑(まこ)という女性の仙人(仙女)がいて、その仙女に爪で掻いてもらうと非常に心地よかったという話が語源で、いつの間にか「まこ」が「まご」に変化して「孫」の字が当てられたとのことです。
「麻姑」と「孫」、どちらに背中を掻いてもらったら気持ちが良いかは、わかりませんが、どこを掻いたら快いかを察知してあげたいものです。

《以心伝心》

今度の諺は「言葉を使わなくてもお互いの気持ちが通じ合うこと」の意味で使われます。
禅宗の仏教用語として、真理や悟りを相手の心に心で伝えることから使われる様になったこと。
「心を以(も)って、心に伝う」と、積極的に心で相手に伝える意味で使われていたものが、強い思いが相手に結果的に届いたり、伝わったりする意味で使用されるように変化してきたとみられています。
言葉は大切なコミュニケーションツールです。
そして、言葉足らずだったために失敗したことはだれもが経験していることと思います。
逆に言葉は巧みに使えても、そこに思いや心が足りなかったがために、相手に意思が伝わらず残念な思いも経験しているのではないでしょうか。
外食系フランチャイズチェーンの拡大時期の頃から、マニュアル化された挨拶トレーニングが日本でも見られるようになりました。
それは、数多くの挨拶定例句を作り、全スタッフが一言一句間違わずに、同じ応対言葉や挨拶をマニュアル通りにしていこうというものです。
「いらっしゃいませ」「店内でお召し上がりですか?」「お持ち帰りですか?」・・・などです。
お笑いタレントの柳原可奈子さんが「いらっしゃいませ~」とか「いらっしゃいませ↑㊤」「いらっしゃいませ↓㊦ 」など声のトーンを上げたり下げたりして茶化していますが、たとえ上質な美辞麗句を並び立てても、そこに感情が入ってなければ、空虚に感じることを利用しているのかも知れません。

《痛くも痒くも》

「いらっしゃいませ」という挨拶を禁止して、「ご来店いただき有難うございます」という挨拶をご来店時に徹底されているサロンオーナーがいらっしゃいます。
そのオーナーによると、「ありがとう」という言葉に対して日本人は無意識のうちに特別な感情移入をするとのことです。
日本人にとって「ありがとう」は魔法の言葉で、聞いた側の人も、言った側の人も本能的に心が優しくなり、心が温まるそうです。
人気作家の中谷彰宏氏によると、外国の人は「チップ」で元気が出る人達が多いが、日本人は「有難う」で一番元気が出る特殊な民族とのことです。
サロンオーナーのお話に戻ると、「いらっしゃいませ」は感情移入しづらい、思いが伝えにくい挨拶で、「ありがとう」はその逆であると氏は言います。
「忙しい中を」「あえて当店を選んでいただき」「遠くから」「雨の中を」などの言葉をスタッフが選びながら、ご来店いただいたことが本当に嬉しいとの思いを込めて、「有難う」の言葉で感謝の気持ちを表現していきます。
「痛くも痒くもない」という諺は、まったく困らない様子やいっこうに平気で何とも感じていない素振りに使います。
来店客にとって「いらっしゃいませ」は痛くも痒くもない、感情のこもりづらい、単なる慣用句にしか聞こえない言葉なのかも知れません。

《猫の手》

実際には役にたつはずのない、猫の手でも借りたいぐらい目が回るほど忙しい時に、「猫の手も借りたい」という諺を使います。
猫の手も借りたいぐらい忙しい中で、お客様に対して施術に集中したい技術者が、他のお客様に対して挨拶をしずらいとの相談を時々受けます。
入口付近で挨拶の声が店内に響き渡った場合に、施術中のスタッフはどんな挨拶をし、どのくらいの大きさの声を発するのか、店内で十分に打ち合わせして、実践していく必要があります。
ご来店いただいたお客様に対する受付付近のスタッフの挨拶に、他のスタッフが無反応な状況になると、来店されたお客様は不安になります。
店舗入口付近の最初の応対スタッフが「有難う」の心温まる挨拶をしたとしても、技術中のスタッフが同じ様にはなかなかできないものです。
とは言っても施術中のスタッフが柳原可奈子的な気のない「いらっしゃいませ」を小声でつぶやいたとしたら、今度はそのスタッフから技術を受けているお客様も、義務的挨拶をしていると察知し、自分も含めたお客様を軽く扱っているととられかねません。
挨拶は相手に聞こえなければ意味の無いものと自覚して、距離やドライヤー音、BGM音などを考えた上で、対象のお客様に届く声の大きさで練習しておくと良いと思います。
店内のどこからでも聞こえやすく、感情移入がしやすく、感謝の意味も伝え易いということから生まれたのが、「デニーズへようこそ!」というファミレスの挨拶だといわれます。
さて、技術経験がまだ浅いアシスタントスタッフの皆さんも、挨拶と笑顔では誰にも負けないことができます。
それには、猫の手にはならず、鵜匠(うしょう) の手になることです。
鵜匠とは鵜飼(うかい)で鵜(う)を匠みに操る親方のことです。
訓練された鵜は鮎を採る名人です。
その鵜に沢山の鮎を捕獲してもらいますが、鮎がたくさん泳いでいる方へうまく船を誘導して、鵜の首につけた縄でコントロールしながら、つかまえて飲み込みかけた鮎を吐き出させて確保し、次の鮎に鵜を差し向けるのが優れた鵜匠です。
鮎がお客様、鵜がスタイリスト、鵜匠がアシスタントのイメージです。
挨拶や笑顔でお客様に気持ち良くなってもらい、スタッフ全員や店舗を活気づける中心にアシスタントスタッフが居るサロンは、例外なく繁栄店となっているようです。

《痛し痒し》

痒い所を掻けば痛いし、掻かなければ痒くてたまらない場合もあります。
都合のいい面と、逆に悪い面とが両面あって、判断に迷って困ることを指した諺です。
サロン内に来店中のお客様へ気遣いをしながら、新たに入ってこられたお客様に対してどの様なお迎えの対応をとるかも、技術系店舗にとっては判断に迷ってジレンマ状態になりがちなところだと思います。
この解決策は「感謝の心」なのではないでしょうか。
お客様に対して「来てくださった」「選んでくださった」といった感謝の心さえ持つことさえできれば、お客様を大切にする気持ちが生まれます。
ひとりひとりのお客様を大切にしようとすれば、お客様を良く観察することにつながります。
お客様に目配りすれば、その仕草や表情等から、快適に過ごしていらっしゃるか、満足していただいているかを推し量ることができるようになります。
その判断ができない場合は、そのお客様にお声掛けをします。
人間は見ていてあげることによって、喜びを感じたり、元気ややる気が出てくる動物なのだそうです。
ジロジロと見るのではなく、挨拶やお声掛けの際にお客様の目を見て、感情の動きなどを感じ取ります。
その他の時は、さりげなくお客様の動きや仕草を時々見ておきます。
退屈そうにしていらしたり、厳しい表情で待っておられるように見えた場合は、雑誌などをお持ちし近づき、お声掛けしてみます。
これが目配り、気配りと呼ばれるものだと思うのです。

《SOS話法》

お客様の話を聞くのが八割、自分から話すのが二割というのが接客業の基本といいます。
その割合が、一番お客様が気持ちの良い状態になると言われます。
適度に会話をリードし、お客様が気を遣わない楽な状況にして差し上げる為には、お客様が答えやすい質問をスタッフからして差し上げることです。
今話題の銀座の筆談ホステス・斉藤里恵さんは、相手の感情を読み取りながら、適切な質問をしていくのが上手いのではないかと思います。
そして、お客様のお話を聞く時は、うなずきながら、あいづちに一工夫加えると良いと思います。
日本プレゼンテーション協会理事長で、インサイトラーニング代表の箱田忠昭氏は、日経紙コラムでSOS話法を提唱しています。
すごいですね(=S)、驚きました(=O)、さすがですね(=S)を効果的に入れるのだそうです。
うわべだけの言葉では逆に反感を持たれる場合もあるので、良い関係を作りたいという思いを込めて、しっかりと聞くのが基本とのことです。
自分の思いをきちっと受け取ってくれて大切にしてくれる人を人間は好きになります。
その気持ちを受け取ってもらうには感謝の気持ちを持って接するのが第一歩で、それに笑顔と挨拶が加われば、接客で失敗する確率は非常に低くなると思いますがいかがでしょうか。

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